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この記事を書いた人:健さん|元プロアスリート / 元納棺師 / 介護福祉士 / 睡眠栄養指導士 初級(一般社団法人睡眠栄養指導士協会 認定)|「人生健康第一」を伝えるブログメディア運営
親が退院して自宅へ戻ったものの、入院前には普通にできていた掃除や洗濯ができない。ゴミ袋を集積所まで運べず、部屋の片付けも進まない。家族が仕事帰りや休日に全部やるしかないのかと困っている方もいるでしょう。退院後は「歩ける」「食事ができる」だけでは生活が元通りになるとは限らず、掃除・洗濯・ゴミ出しなど、これまで自分でしていた家事の一部だけが難しくなることがあります。
私は元プロアスリートとして体と向き合い、納棺師として人の命の終わりを見届け、現在は介護福祉士として日常の健康と生活を支える現場にいます。そんな経験から辿り着いた信念があります。それは人生健康第一です。退院後の生活でも大切なのは、できなくなった家事を家族がすべて代わることではなく、ご本人の体力や動作を確認しながら、できることは残し、難しい部分だけを必要な支援へつなげていくことです。
この記事では、親の退院後に掃除・洗濯・ゴミ出し・片付けが難しくなった時に、まず何を確認すればよいのか、本人ができる家事をどこまで残すのか、介護保険の訪問介護と保険外サービスをどう使い分けるのかを順番に整理します。家族が全部を背負うのではなく、本人・家族・専門職・サービスで役割を分けながら、退院後の生活を無理なく立て直す方法を見ていきます。
最初の判断軸は「家事ができるか、できないか」の二択ではありません。入院前と退院後を比べ、どの工程なら今も安全にできるのか、どの工程で疲れるのか、転倒や再入院につながる危険がないかを確認します。そのうえで、本当に難しい部分だけを支援へ移すと、ご本人の生活能力を残しながら家族の負担も減らしやすくなります。
この記事のポイント
- 退院前後で家事能力をどう比較すればよいかがわかる
- 掃除・洗濯・ゴミ出しを工程別に考える理由が理解できる
- 介護保険と保険外サービスの使い分けがわかる
- 家族が全部代行せず生活を再構築する方法が理解できる
退院後に家事ができない時の確認
- 入院前と退院後を比べる
- 家事を工程ごとに分ける
- 安全に繰り返せるかを見る
- 生活全体の変化も確認する
入院前と退院後を比べる
親が退院した直後に部屋が散らかり始めると、「もう家事ができなくなった」と考えやすくなります。しかし、最初に確認したいのは、入院前にどの程度できていて、退院後にどこが変わったのかです。掃除機をかけること自体ができなくなったのか、掃除機は使えるけれど押し入れから出せなくなったのかでは、必要な支援が違います。
入院中はベッド周辺を中心とした生活になり、歩く距離や家事動作が減ります。退院時に病棟内を歩けていても、自宅では洗濯物を持って移動したり、低い場所へ手を伸ばしたり、ゴミ袋を持って玄関の段差を越えたりする必要があります。病院内で確認された動作と、自宅の家事に必要な動作は同じではありません。
そのため「退院できたのだから家事もできるはず」と考えず、入院前に本人が行っていた行為を一度書き出してみます。掃除、洗濯、ゴミ出し、調理、買い物などを並べ、その中で退院後に変わったところへ印を付けるだけでも構いません。できなくなった家事が一つなのか、複数へ広がっているのかも見えてきます。
「退院したばかりなんだから、家族がしばらく全部やればいいんじゃない?」
退院直後に家族が一時的に支えることはあります。ただし、最初から全部を代行して固定してしまう必要はありません。本人が今もできる動作まで家族が引き取ると、回復してきた能力を使う機会まで減ってしまうことがあります。
たとえば洗濯機の操作と衣類を畳むことはできるものの、濡れた洗濯物を運んでベランダへ干す動作だけが危険なら、干す工程だけ支援する方法があります。掃除も、テーブル周辺を拭くことは本人が行い、掃除機を持って移動する部分を家族やサービスへ任せるという分け方ができます。
退院後の家事は「全部できる・全部できない」ではなく、入院前と比べて難しくなった工程を探すことが出発点です。
退院後数日だけでは判断しにくい場合もあります。疲労の出方、朝と夕方の動きの違い、家事をした翌日に強い疲れが残っていないかも確認してください。体力が戻れば支援を減らせることもあるため、退院時点の状態をそのまま長期の生活能力と決めつけないことが大切です。
家事を工程ごとに分ける
掃除・洗濯・ゴミ出しは、一つの家事に見えて実際には複数の工程でできています。掃除なら、掃除道具を準備する、床の物を片付ける、掃除機を動かす、屈んでゴミを拾う、ゴミを袋へ集める、最後に掃除機を片付けるという流れがあります。どこか一つだけ難しくても、「掃除ができない」とまとめてしまいがちです。
洗濯も同じです。衣類を洗濯機へ入れる、洗剤を量る、ボタンを操作する、濡れた衣類を取り出す、干す場所まで運ぶ、物干しへ手を上げる、取り込む、畳む、収納するまで続きます。肩が上がりにくい人なら干す動作だけが難しいこともありますし、歩行が不安定なら洗濯かごを持って移動することが危険になる場合があります。
ゴミ出しも、室内のゴミを袋へまとめるところまではできても、重くなった袋を持って階段を下りたり、決められた集積所まで歩いたりすることが難しい場合があります。マンションか戸建てか、エレベーターがあるか、集積所まで何メートルあるかでも負担は変わります。
「本人ができることを細かく確認するなんて、かえって面倒じゃない?」
最初は少し手間ですが、ここを分けるほど後の支援を減らしやすくなります。「掃除を全部頼む」より「床掃除とゴミ運搬だけ頼む」と分かれば、家族の作業時間もサービス利用時間も絞れます。
本人にとっても、できる家事を続けることは生活の役割を残すことにつながります。家族が良かれと思って何でも代わりにすると、「もう何もしなくていい」と受け止めてしまう人もいます。反対に危険な作業を無理に続けさせる必要もありません。本人ができることと、支援した方がよいことを分ける考え方が必要です。
介護サービスを相談する時も、「家事ができません」ではなく「洗濯物を干す時にふらつく」「ゴミ袋を集積所まで運べない」と具体的に伝えると支援内容を検討しやすくなります。
家族で確認する場合は、本人の前で「できないこと一覧」を作るような進め方は避けた方がよいでしょう。「どこなら今まで通りできそうか」「どこだけ手伝えば楽か」と一緒に確認すると、本人の自尊心を守りながら現実的な分担を考えやすくなります。
安全に繰り返せるかを見る
退院後の家事能力を見る時は、一度できたかどうかだけで判断しないことも重要です。洗濯物を一度干せたとしても、毎日同じ動作を安全に続けられるとは限りません。病院から帰った当日は元気でも、翌日に疲れが強く出る人もいます。
特に注意したいのは、重い物を持つ、屈む、立ち上がる、腕を高く上げる、段差を越える、物を持ったまま歩くといった家事動作です。普段は歩けていても、洗濯かごやゴミ袋を持つと両手がふさがり、家具や手すりにつかまれなくなります。床へ物が置かれている家では、家事中の移動そのものが転倒リスクになります。
また、家事を終えることだけを目標にすると、本人がかなり無理をしていても気づけません。途中で何度も座る、息切れする、顔色が悪くなる、以前より極端に時間がかかる、終わった後に横になってしまう場合は、「できた」ではなく負担が大きい状態として見た方がよいでしょう。
「本人は大丈夫だって言うし、任せてもいいですよね?」
本人の希望は大切ですが、「大丈夫」という言葉だけで決めず、実際の動きも合わせて確認してください。高齢者の生活を見る時は、言葉だけでなく普段との表情、反応、歩き方、疲れ方などの違いも判断材料になります。
家族がいる時に一度だけ家事動作を確認する方法もあります。洗濯物を持って移動する時にふらつかないか、ゴミ袋を持ったまま玄関を安全に通れるか、掃除の途中で何度も休憩が必要にならないかを見ます。危険が見つかった作業だけ支援へ移せば、本人の生活を必要以上に奪わずに済みます。
転倒しそうな動作、強い息切れ、医師から制限されている動作がある場合は、家事を続けられるかを本人だけで判断せず、退院時の指示や医療・介護職へ確認してください。
退院時に「重い物を持たない」「患部へ負担をかけない」などの注意を受けている場合もあります。家族が説明を聞けていない時は、本人の記憶だけへ頼らず退院時の書類を確認し、必要に応じて病院側へ問い合わせます。家事を早く元通りに戻すことより、再転倒や再入院を避ける方が優先です。

退院して数日だけ家事を休ませれば元に戻りますか?

回復することはありますが期間は一律ではありません。退院後の体力や病気、手術内容、リハビリ状況によって違うため、数日で決めず実際の動きを見ながら支援量を調整してください。

掃除より食事やトイレを先に考えた方がいいですか?

退院直後は生活が止まる課題から優先します。食事、排泄、服薬、安全な移動などが成立しているかを確認したうえで、掃除や洗濯の支援を組み立てると整理しやすくなります。

本人が家事をやりたがる時は止めない方がいいですか?

安全にできる工程は残して構いません。ただし転倒や医師の動作制限に関係する作業は別です。本人の希望と安全性の両方を見て、危険な工程だけ手伝う方法を考えます。

生活全体の変化も確認する
この記事では退院後に家事が難しくなったケースを中心にしていますが、掃除だけの問題なのか、生活全体へ変化が広がっているのかは確認しておきたいところです。入院前は問題なかったのに、退院後から体力低下で洗濯物を運べないというケースと、入院前から徐々に部屋が散らかり、服装や薬の管理まで乱れていたケースでは考え方が変わります。
料理をしなくなった、冷蔵庫に古い食品が増えた、薬を飲み忘れる、同じ物を何度も買う、支払いを忘れる、着替えや入浴が減ったなど、家事以外にも変化が重なっている場合は、単純な退院後の体力低下だけで説明しない方がよいでしょう。病気の影響、認知機能、気力低下など複数の要因が関係している可能性があります。
「そういえば入院する前から部屋が少し荒れていたかもしれない」
その場合は、今回の退院をきっかけに初めて家事の問題が発生したとは限りません。入院前の数か月を振り返り、何がいつ頃から変わっていたのかを整理してください。
退院前から家事や身だしなみなど複数の生活変化が見られていた場合は、掃除サービスを追加するだけでは原因部分を見落とす可能性があります。家族が気づいた変化をまとめ、必要に応じて地域包括支援センターや医療・介護職へ相談すると、生活全体から支援を考えやすくなります。
退院後の家事低下だけなのか、入院前から生活全体が変化していたのかを分けることが重要です。
退院前から家事や身だしなみの乱れが続いている場合は、健さんのこちらの記事も参考にしてください。親の家事や身だしなみが乱れた時の支援の始め方
掃除・洗濯・ゴミ出しの支援方法
- 訪問介護の生活援助を相談する
- 介護保険で難しい家事を分ける
- 保険外サービスを組み合わせる
- ゴミ出しと片付けを別に考える
- 支援量を定期的に見直す
親の介護で迷ったときに役立つ情報を、これからも分かりやすく発信していきます。
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訪問介護の生活援助を相談する
要介護認定を受けている親で、日常生活の維持に必要な家事が難しくなった場合は、訪問介護の生活援助を利用できる可能性があります。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも、訪問介護では身体介護のほか、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助を行うと案内されています。
制度の基本を確認したい方は、厚生労働省の介護サービス情報公表システム「訪問介護」も確認できます。生活援助は一般的な家事代行とは異なり、本人の日常生活を維持するために必要な支援としてケアプランへ位置付けて利用することが基本です。
たとえば親自身の衣類を洗う、本人が使う部屋を掃除する、生活に必要な買い物を行うといった支援は検討対象になります。一方で、家族全員の洗濯や来客用の部屋の掃除、庭の手入れ、大掃除などは同じようには扱われません。何をしてもらえるかは、「家事」という言葉だけで判断せず、具体的な作業をケアマネジャーや事業所へ確認する必要があります。
「ヘルパーさんに来てもらえば、家のことは全部お願いできますよね?」
介護保険の訪問介護では、家全体の家事を何でも引き受けてもらう仕組みではありません。本人の日常生活に必要な範囲が基本になるため、家族分の家事や日常生活の範囲を超える作業とは分けて考えます。
そのため相談前に、「母の衣類を週2回洗濯してほしい」「本人が使用する居室とトイレの通常清掃を手伝ってほしい」「ゴミを集積所へ運べない」といった形まで具体化すると話が早くなります。同居家族がいる場合も、一律に自己判断で利用不可と決めず、家族が実際に家事を担える状態かも含めて相談してください。
訪問介護を検討する時は、本人の日常生活に必要な家事と、家族分や大掃除など別の家事を切り分けてケアマネジャーへ相談します。
すでに担当ケアマネジャーがいるなら、退院後の動作が変わった時点で連絡します。入院前のケアプランをそのまま再開するだけでなく、掃除や洗濯が新たに難しくなったことを伝え、サービス内容や回数を見直す必要がないか確認します。
介護保険で難しい家事を分ける
介護保険の生活援助と、一般の家事代行や保険外介護サービスを混同しないことも重要です。家族が「掃除をお願いしたい」と考えていても、その掃除が本人の生活スペースの通常清掃なのか、長期間放置された家全体の大掃除なのかで適するサービスが変わります。
洗濯も、親本人の日常衣類を洗うことと、同居家族の衣類までまとめて洗うことでは扱いが違います。庭の草むしり、ペットの世話、窓ガラスの大がかりな清掃、家具を大きく動かす作業なども、介護保険の生活援助だけで考えると希望通りにならない可能性があります。
家族が困りやすいのは、「できる・できない」より境界部分です。本人も使うリビングの掃除をどこまで依頼できるのか、ゴミ出しだけを短時間でお願いできるのか、家族と本人の洗濯物が最初から一緒になっている時はどうするのかなど、家庭ごとの状況があります。全国一律に単純化せず、担当ケアマネジャーやサービス事業所へ確認することが安全です。
| 家事 | 介護保険で相談しやすい例 | 別サービスも検討する例 |
|---|---|---|
| 掃除 | 本人が使う居室などの日常清掃 | 大掃除・庭・専門清掃 |
| 洗濯 | 本人の日常衣類の洗濯 | 家族分を含む洗濯 |
| ゴミ | 生活援助の一連の作業 | 単独の短時間依頼など |
| 片付け | 日常生活上の整理 | 大量処分・大規模整理 |
| 調理 | 本人の生活に必要な調理 | 家族全員分の調理 |
| その他 | 本人の日常生活維持に必要な家事 | ペット・庭仕事など |

同居している家族がいると生活援助は使えないのですか?

同居だけを理由に自己判断で諦めないでください。本人の生活上の必要性や家族が実際に家事を行える状況かなどを確認し、ケアマネジャーや事業所、必要に応じて市区町村へ相談します。

ゴミ出しだけ毎朝頼むことはできますか?

ゴミ出しが生活援助の一部として扱われることはありますが、ゴミ袋を運ぶだけの短時間訪問を単独で設定できるとは限りません。掃除など他の援助との組み合わせや地域独自支援も含めて確認してください。

退院直後で介護認定がない場合は家事支援を頼めませんか?

介護保険をまだ利用できない時でも、病院の相談窓口や地域包括支援センターへ相談できます。退院直後だけ保険外サービス等でつなぎ、介護認定後に支援体制を組み直す方法も検討できます。
保険外サービスを組み合わせる
介護保険では依頼しにくい家事や、退院直後で介護保険サービスの調整が間に合わない部分には、保険外サービスを組み合わせる方法があります。保険外サービスは介護保険の給付とは別に料金を支払う代わりに、事業者によっては家事の対象範囲や利用時間を広く設定できます。
たとえば自費の訪問支援サービス「イチロウ」では、掃除、洗濯、調理などの家事に加え、買い物代行、外出付き添い、見守りなどを提供しています。介護保険では対象になりにくい生活圏以外の掃除なども相談できるため、「本人の日常家事は介護保険、範囲外部分は自費」という分け方も考えられます。
ただし、自費サービスは使った時間に応じて費用が増えます。2026年9月確認時点のイチロウは介護コースが1回2時間からで、ライトプランの日中料金は1時間3,740円(税込)です。定期利用向けなど別プランもあり、夜間、当日予約、指名、交通費などで料金が変わるため、利用前に最新条件を確認してください。
現在の料金や利用条件は、イチロウ公式の料金ページで確認できます。サービス提供地域も限定されているため、親の住所が対象地域かを先に確認しておく必要があります。
「家事が大変なら、週に何回か自費で全部やってもらった方が楽かな」
全部を依頼する前に、必要な作業時間を切り出した方が費用を抑えやすくなります。本人が洗濯機を回せるなら、洗濯一式を依頼する必要はないかもしれません。
たとえば「浴室と床の掃除」「重いゴミの運搬」「シーツ交換」など負担が大きい部分を週1回まとめて依頼し、それ以外を本人や家族で分担する方法があります。反対に退院直後で見守りも必要なら、家事だけでなく食事準備や生活状況確認まで同じ時間帯へまとめる方が合理的な場合もあります。
保険外サービスは「何時間頼むか」から決めるのではなく、「家族や本人では難しい作業は何か」を決めてから必要時間を考えます。
家族が毎週仕事を休んで掃除や洗濯をする状態が続けば、家族側の生活も崩れます。介護保険でできること、保険外サービスへ移すこと、家族が担うことを分けると、在宅生活を続けるための現実的な形を作りやすくなります。

ゴミ出しと片付けを別に考える
「親の家が片付かない」という相談では、日常的なゴミ出しと、大量の物を整理・処分する片付けを分けて考える必要があります。退院後にゴミ袋を集積所まで運べなくなっただけなら、必要なのは日常生活を続けるための小さな支援です。一方、何年も物が積み上がっている家では、通常の生活援助だけでは解決しにくくなります。
ゴミ出しでは、室内で分別する、袋へ入れる、袋を縛る、玄関まで運ぶ、階段や廊下を通る、集積所まで持って行くという工程があります。どこまで本人ができるのかを確認すると、家族やサービスが担う範囲を小さくできます。
また自治体によっては、高齢者などを対象としたゴミ出し支援や戸別収集に近い制度を設けている場合があります。ただし対象条件や制度名は地域で異なるため、他地域の制度をそのまま利用できるとは限りません。親の住所地の市区町村や地域包括支援センターへ確認するのが確実です。
「週末に家族が行って、一気に全部片付ければ早いですよね」
安全上すぐ処分しなければならない物は別ですが、本人の持ち物を家族判断だけで大量に処分するのは避けた方がよいでしょう。本人には本人なりの使用目的や思い入れがある物もあります。
退院直後は身体機能や生活リズムの再構築が優先されます。通路をふさいで転倒につながる物、衛生上問題があるゴミなどから優先し、生活を安全にする最低限の片付けと、長期間かけて行う整理を分けると進めやすくなります。
退院直後に転倒の原因となる床置きの荷物や移動経路の障害物がある場合は、見た目の片付けより安全な通路の確保を優先してください。
大量の不用品処分や専門的な清掃が必要な場合は、訪問介護とは別のサービスを検討します。一方、毎週少量のゴミを出すことだけが問題なら、大がかりな片付けサービスへ飛ぶ必要はありません。困っている作業の大きさに合った支援を選ぶことが大切です。
| 選択肢 | 向いている場面 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 本人 | 安全にできる工程 | 疲労・転倒リスク |
| 家族 | 一時的・重要な支援 | 仕事や距離の負担 |
| 訪問介護 | 本人の日常生活に必要な家事 | ケアプラン・対象範囲 |
| 保険外支援 | 介護保険外の家事や長時間支援 | 料金・最低時間・地域 |
| 地域支援 | ゴミ出しなど地域独自支援 | 対象条件・実施地域 |
| 専門業者 | 大量処分・専門清掃 | 見積り・作業範囲 |
支援量を定期的に見直す
退院直後に決めた家事支援を、そのまま何か月も固定する必要はありません。入院による体力低下が改善すれば、本人が再びできる家事が増えることがあります。反対に、退院後の生活を始めて初めて別の困りごとが見えてくる場合もあります。
たとえば最初は洗濯だけが問題だと思っていたものの、実際には買い物へ行けず食品が不足していた、ゴミの日を忘れるようになった、薬の管理も難しくなっていたということがあります。退院後の生活は、病院から自宅へ戻った時点で完成するのではなく、実際に暮らしてみながら調整していく期間と考えた方が現実的です。
見直す時は、「できるようになったこと」「今も危険なこと」「新しく困っていること」の三つへ分けます。本人が自分でできるようになった工程は戻し、危険が続く作業は支援を継続し、新しい課題はケアマネジャーなどへ相談します。これなら支援を増やす一方ではなく、減らす判断もできます。
「一度サービスを入れたら、ずっと使い続けることになるのが心配です」
必要性が変われば見直して構いません。退院直後だけ支援を厚くし、体力が戻ったら減らすという使い方もあります。
家族側の状況も同じです。最初の1週間は休暇を取れても、その後毎週仕事を休み続けられるとは限りません。親の状態だけでなく、家族が無理なく継続できるかも支援計画へ入れる必要があります。「何とかする」ではなく、曜日と時間まで具体的にすると支援の穴が見つかります。
家事支援のゴールは家族が全部代行することではなく、本人ができる部分を残しながら、家族も継続できる生活体制を作ることです。
介護保険だけでは埋まらない時間や家事が明確になったら、保険外サービスを必要な部分へ使う方法があります。特に家事だけでなく見守りや外出支援も同じ日に必要なら、一つずつ家族が対応するより外部支援へまとめた方が現実的な場合もあります。

家族が週末だけ掃除に行けるならサービスは不要ですか?

週末の支援だけで生活が安全に回るなら、無理にサービスを増やす必要はありません。平日にゴミがあふれる、洗濯物が不足するなど支障が出るなら、その部分だけ外部支援を検討します。

退院後どのくらいで支援を見直せばいいですか?

一律の期間はありません。退院後の実際の生活で「できることが増えた」「新しい困りごとが出た」と気づいた時が見直しのタイミングです。担当ケアマネジャーがいる場合は早めに共有してください。

家族が限界になる前に保険外サービスを使ってもいいですか?

構いません。家族が倒れるまで頑張ってから使うものではありません。費用とのバランスを見ながら、負担が大きい家事や時間帯だけ早めに外へ移す考え方もあります。

親の退院後は家事を分けて生活を再構築する
親が退院後に掃除・洗濯・ゴミ出しをできなくなった時、最初から「もう家事は無理」と決める必要はありません。まず入院前と退院後を比べ、何が変わったのかを確認します。同じ掃除でも、掃除機を動かせないのか、屈めないのか、ゴミ袋を運べないのかで必要な支援は違います。洗濯も操作、運搬、干す、取り込む、収納する工程へ分けると、本人がまだできる部分が見つかることがあります。
そのうえで「一度できるか」ではなく、「安全に繰り返せるか」を見ます。退院直後は体力が戻り切っていないこともあり、重い物を持った移動や屈伸、ベランダへの出入りなどが転倒につながる可能性があります。危険な工程は家族やサービスへ移し、安全にできる家事は本人に残すという分け方が現実的です。
介護保険の訪問介護では、本人の日常生活に必要な掃除・洗濯などを生活援助として相談できる場合があります。ただし一般の家事代行と同じではなく、家族分の家事、大掃除、庭仕事などは別に考える必要があります。介護保険では対応しにくい家事や長時間の支援には、保険外サービスや地域独自の生活支援を組み合わせる方法があります。
最も避けたいのは、家族が「退院したばかりだから」と全てを引き受け、その状態が何か月も続くことです。退院直後は家族が多く関わる時期があっても、その後まで同じ負担を続けられるとは限りません。本人ができること、介護保険で支えること、保険外サービスへ頼むこと、家族が担うことを分けておけば、状態が変わった時にも調整しやすくなります。
退院後の生活は一度決めて終わりではありません。体力が戻れば支援を減らし、新しい問題が見つかれば増やします。掃除だけでなく料理、服薬、金銭管理、身だしなみなどにも変化が広がっている場合は、生活全体を見直す必要があります。家族だけで判断せず、ケアマネジャー、地域包括支援センター、医療機関などへ具体的な困りごとを伝えながら、親の今の状態に合う生活へ組み直していきましょう。
健さんの視点コラム
退院は家族にとって「治って家へ帰ってきた」と感じやすい節目です。しかし、自宅へ帰れたことと、入院前と同じ生活へすぐ戻れることは同じではありません。食事やトイレは何とかできても、掃除機を動かす、洗濯物を持つ、ゴミ袋を運ぶといった家事で初めて体力低下に気づくことがあります。
本人側には「今まで自分でやってきた」という思いがあります。家族側には「転んだら困る」「また入院されたら大変」という心配があります。この二つがぶつかると、本人は「何でも取り上げられた」と感じ、家族は「心配しているのに聞いてくれない」と疲れてしまいます。家事を工程ごとに分けることは、この対立を少し減らす方法にもなります。
本人が安全にできることは本人が続け、危険な作業や負担の大きいところを家族やサービスが補います。介護職やケアマネジャーには、家庭の家事を全部引き受ける役割ではなく、本人の生活をどう成立させるか一緒に考える役割があります。保険外サービスも、介護保険だけでは埋まらない部分を支える選択肢として考えればよいでしょう。
人生健康第一とは、何でも本人に頑張ってもらうことでも、家族が全部代わりに行うことでもありません。本人が無理をして転倒したり、家族が仕事や生活を犠牲にし続けたりすれば、どこかで支え方が続かなくなります。必要な支援を早めに使い、本人の力も残しながら生活を整えることが健康を守ることにつながります。
退院後に家が少し散らかっていても、すぐ完璧な状態へ戻す必要はありません。まず安全に歩けること、食事や排泄、服薬が成り立つこと、その次に掃除や洗濯などを整えていく順番でも構いません。本人が今日できることと、家族が継続してできることを見ながら、外部支援も使って生活を少しずつ組み直すことが現実的な支え方です。
介護は、家族だけで抱え続けるものではありません。私たち介護職は、ご本人だけでなく、支えるご家族のためにもいます。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の介護方針や制度利用を断定するものではありません。介護の方法や利用できる制度、支援内容はご本人の状態や地域の状況によって異なります。具体的な判断については、医療機関、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどの専門職へご相談ください。