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この記事を書いた人:健さん|元プロアスリート / 元納棺師 / 介護福祉士 / 睡眠栄養指導士 初級(一般社団法人睡眠栄養指導士協会 認定)|「人生健康第一」を伝えるブログメディア運営
「最近、親が同じ話を何度もするようになった」「約束を忘れることが増えた」「家族の名前を間違えることまである」。こうした変化が重なると、年齢による普通の物忘れなのか、それとも認知機能が低下してきているのか、気になりますよね。この記事では、忘れた回数だけを見るのではなく、親が何をどう忘れているのか、生活のどこまで変化が広がっているのかを確認していきます。
私は元プロアスリートとして体と向き合い、納棺師として人の命の終わりを見届け、現在は介護福祉士として日常の健康と生活を支える現場にいます。そんな経験から辿り着いた信念があります。それは人生健康第一です。親の変化が気になったときも、家族だけで認知症かどうかを決めるのではなく、本人と家族の生活を守るために必要な確認から始めることが大切です。
まず、「名前が出てこない」「物を置いた場所を忘れる」といった加齢でも起こり得る変化と、出来事そのものを忘れる、曜日や場所を大きく取り違える、料理や服薬など以前できていたことが難しくなる変化を分けて見ます。そのうえで、急な変化ではないか、受診や相談を考えたほうがよい状態ではないかまで順番に確認します。
最初から親を試すように質問を繰り返す必要はありません。「認知症かどうか」を当てるより、以前と比べて何が変わったのかを見てください。まずは、日常で気づきやすい物忘れの違いから確認していきましょう。
この記事のポイント
- 加齢による物忘れと認知機能低下で見られる忘れ方の違いがわかる
- 会話や日時、家族の認識まで広がる変化が理解できる
- 服薬や金銭管理など生活への影響を見る方法がわかる
- 家族が記録して受診や相談につなげる流れが理解できる
親の物忘れが増えた時の普通との違い
- 同じ話や同じ質問を繰り返す
- 約束や予定そのものを忘れる
- 名前が出ない時と家族が分からない違い
- 曜日・季節・場所を間違える
- 会話が噛み合わない時は聞こえも確認
同じ話や同じ質問を繰り返す
親が同じ話を何度もすると、「これはもう普通の物忘れではないのでは」と気になるかもしれません。ただ、同じ話をするという行動だけでは分かりません。昔から好きな思い出を何度も話すことと、数分前に話したこと自体を覚えておらず、初めて話すようにもう一度話すことでは違います。
では、どこを見ればいいのでしょうか。たとえば、「病院は何時?」と聞いて答えを伝えたあと、少ししてまた同じ質問をしたとします。このとき、答えだけを忘れたのか、それとも自分がさっき質問したことまで覚えていないのかを見ます。同じ質問を何回したかだけでなく、「その質問をしたこと自体を覚えているか」まで見ると、忘れ方の違いを確認しやすくなります。
「さっきも聞いたよ」と伝えたときに、「ああ、そうだった」と思い出せるなら、質問した出来事そのものは残っている可能性があります。反対に、本人にとっては本当に初めて聞いているような反応で、同じことが短い間隔で何度も続くなら、家族としてはその繰り返し方まで見ておきたいところです。
ここで「同じ質問を2回したら注意、3回なら受診」というように回数で区切りたくなるかもしれません。しかし、回数だけでは決められません。不安や疲れ、聞き取りにくさなどで確認を繰り返すこともあります。病院の予定だけを何度も聞くなら、その予定が気になって何度も確認している可能性もあります。
では、何が重なれば見方が変わるのか。病院の時間だけでなく、食事をしたこと、家族から電話があったこと、その日の予定など、最近起きた別の出来事でも同じように繰り返すようになっているかを見ます。ひとつの話題だけではなく、最近の出来事全体で同じ変化が出ているなら、「また同じ話をした」という一場面だけでは捉えにくくなります。
「同じことをまた言っている」と注意するより、「いつ頃から」「どのくらいの間隔で」「何について繰り返しているか」を覚えておくほうが、その後の確認につながります。本人を責めても忘れ方そのものは分かりません。家族が知りたいのは、繰り返したことではなく、以前と比べて何が変わってきたのかです。
約束や予定そのものを忘れる
「病院の予約を忘れた」「家族との約束を忘れた」。これも一度なら誰にでもあり得ます。ここで確認したいのは、予定の時間を忘れたのか、約束したことそのものを覚えていないのかです。
たとえば、「あ、今日だったのか」と約束自体は思い出せるなら、約束した事実は残っています。一方、「そんな約束はしていない」となり、何度説明しても予定が定着しない場合は、忘れ方が違います。
家族から見れば、どちらも結果は「予定どおり動けなかった」です。ただ、時間だけを忘れたのか、予定そのものが残っていないのかで、次に確認することが変わります。時間だけならカレンダーやメモを見て思い出せることがありますが、約束したことそのものが残りにくくなっている場合は、「書いてあるけれど何の予定か分からない」ということも考えられます。
では、カレンダーに書いておけば大丈夫なら問題はないのでしょうか。見るのは、カレンダーを使っているかどうかではありません。書いてある予定を自分で確認し、「今日は病院だから準備しよう」と予定と行動を結び付けられているかです。メモやカレンダーがあるかではなく、それを見て予定を理解し、必要な行動につなげられているかまで確認します。
たとえば、家族が前日に「明日は病院だよ」と伝え、本人もカレンダーを見て当日の朝に準備できているなら、道具を使いながら予定を管理できています。反対に、カレンダーを見ても何の予定か分からない、家族が説明しても少しするとまた最初から確認が必要になる、時間になっても準備へつながらないとなれば、単なる予約忘れとは内容が違ってきます。
予約日を一度間違えたことより、これまで自分で管理できていた予定を繰り返し間違える、説明してもすぐ分からなくなる、予定に合わせた準備まで難しくなるといった変化が重なっていないかを見てください。単発の失敗ではなく、以前はできていた管理が今どうなっているかを比べることが大切です。
名前が出ない時と家族が分からない違い
「最近、人の名前が出てこない」と聞くと、それだけでも心配になりますよね。ただ、顔を見て誰なのかは分かっているのに名前だけが出てこないことは、加齢でも起こります。人の顔や関係は分かっていて、「ほら、あの人……」となる状態です。
ここで見るのは、名前だけが出ないのか、その人との関係まで分からなくなっているのかです。たとえば名前は出なくても、「昔からの友人」「近所の人」「娘の旦那さん」と分かっているなら、人物そのものは認識できています。
一方で、「名前を忘れる」のとは別に確認したいのが、目の前の人そのものを誰だか分からなくなる状態です。家族を別の人と思う、配偶者や子どもとの関係が分からない、知っている人の顔を認識できないといった変化は、単に名前が出てこない状態とは同じではありません。「名前が出てこない」と「その人が誰なのか分からない」は、同じ物忘れとして一緒にしないことが大切です。
「母が私を姉の名前で呼んだ。もう家族が分からなくなったのか」と考えるかもしれません。そこで一度の呼び間違いだけで決めず、その後まで見ます。顔を見れば誰なのか分かっているか、「○○だよ」と伝えれば納得するか、母と娘、夫と息子といった家族関係そのものまで取り違えていないかです。
兄弟姉妹の名前を言い間違えても、「あなたが誰か」は分かっていることがあります。反対に、名前を教えても人物関係が分からない、別の家族だと思い続けるような変化が出ているなら、確認する内容は変わります。家族としては一度名前を間違えられただけでも衝撃がありますが、そこで結論を出すのではなく、本人が何を分かっていて、何が分からなくなっているのかを分けて見てください。

親が子どもの名前を一度間違えたら認知症なのでしょうか?

一度名前を間違えただけでは判断できません。顔や人物関係は分かっているのか、名前だけが出てこないのか、同じような取り違えが増えているのかを分けて確認します。

人の名前が出てこないのは普通の物忘れですか?

や人物そのものは分かっていて名前だけが出てこない状態は、加齢でもみられます。名前だけではなく、その人が誰なのか分からなくなっている場合とは分けて考えます。
曜日・季節・場所を間違える
「今日は何曜日だっけ」と聞かれただけなら、すぐに異常とは言えません。日付を一日程度間違えたり、曜日を一瞬思い出せなかったりすることは加齢でもあります。問題になるのは、時間や場所の認識が以前より大きく変わり、普段の生活にも影響しているかどうかです。
たとえば、ゴミの日を一度間違えただけなら、それだけで認知症とは判断できません。仕事をしていない、曜日ごとの予定が少ないといった生活なら、一瞬「今日は何曜日だったかな」と迷うこともあります。
では、どこから見方が変わるのか。今日が何曜日か繰り返し分からない、午前と午後を取り違える、季節を大きく間違える、病院の予約日を何度も間違えるといったことが重なっているかを見ます。さらに、以前は自分でできていたゴミ出しや通院予定の管理まで難しくなっているなら、「曜日を一度間違えた」という話から一段変わってきます。
「場所を間違えるのも同じなのか」と考えるところです。慣れた道で迷う、自宅にいるのに「家へ帰る」と言う、今いる場所が分からなくなるといった変化は、日付を一日間違えることとは内容が違います。曜日や日付の正解だけを見るのではなく、予定管理や慣れた場所での移動まで以前と同じようにできているかを確認します。
自宅で「昔の家に帰る」と言った場合も、その一言だけでは分かりません。「昔住んでいた家が懐かしい」という意味なのか、「自分は今もその家に住んでいる」と思っているのかで内容が違います。
昔の話をよくすること自体も認知症とは限りません。昔話を楽しそうにすることと、現在と過去を取り違えていることは別です。家族として確認したいのは、昔の話が多いことではなく、現在の年月、場所、家族との関係などを本人がどう理解しているかです。
会話が噛み合わない時は聞こえも確認
物忘れより、「最近、話が通じなくなった」と感じる家族もいるでしょう。質問と違う返事が返ってくる、話の途中で何の話だったか分からなくなる、同じ説明をしても理解できない。認知機能の変化は記憶だけではなく、注意や言葉の理解などにも現れることがあります。
すると、「会話が噛み合わないなら認知症なのか」と考えるところです。ただ、ここは認知機能だけを見てしまうと分かりにくくなります。高齢になると聞こえにくさが会話へ影響し、質問そのものを正しく聞き取れていないために返事がずれて見えることもあります。
たとえば、「明日の病院は10時だよ」と伝えたのに、まったく違う返事が返ってきたとします。それだけでは、話の意味を理解できなかったのか、最初の「明日の病院」という言葉が聞き取れていなかったのかまでは分かりません。
では、何を比べるのか。顔を見てゆっくり話したときには会話が通るのか、電話では聞き返しが増えるのか、聞き直したあとなら内容を理解できるのかを見ます。「話が通じない」と感じたときは、理解力だけでなく、そもそも会話を十分に聞き取れているかも分けて確認します。
電話では、その違いがさらに分かりにくくなります。同じ用件で短時間に何度も電話する、電話したこと自体を覚えていない、同じ話を毎回初めてのようにするなら、聞こえだけでは説明しにくい変化もあります。一方、何度も「え?」「何?」と聞き返していても、内容を聞き取れたあとは会話が成立するなら、別の確認が必要になります。
「前より話さなくなった」という変化も、ひとまとめにはできません。言葉が出にくいのか、相手の話を理解しにくいのか、聞こえていないのか。それぞれで家族が見るところは違います。「話が通じない」という印象だけで終わらせず、どの場面で、何を伝えたときに、どう返ってきたのかまで具体的にすると変化を捉えやすくなります。
親の物忘れが増えた時の生活変化と相談目安
- 財布や鍵をなくし物を隠す
- 料理や着替えなど生活手順が崩れる
- 服薬・金銭管理への影響を比べる
- 急な物忘れや会話の変化は原因を確認
- 家族はテストせず具体的な出来事を記録
- 受診や相談につなぐ変化の目安
親の介護で迷ったときに役立つ情報を、これからも分かりやすく発信していきます。
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財布や鍵をなくし物を隠す
財布や鍵をどこに置いたか分からなくなることは、誰にでもあります。ここでも、「なくした」という結果だけを見ると違いが分かりにくくなります。
たとえば、自分でどこかへ置いたことは覚えていて、「さっきここに置いたはずなんだけど」と探しているなら、置いたという出来事は残っています。一方、自分でしまったこと自体を覚えておらず、財布が見つからない理由を説明できない場合は、忘れ方が変わってきます。
家族としては、「また財布がないと言っている」と紛失の回数に目が向きます。ただ、ここで見るのも回数だけではありません。「どこかへしまったことは覚えているけれど場所が分からない」のか、「自分は財布を触っていないのに消えた」と考えているのかで、本人の中で起きていることが違います。
「最近、大事な物を隠すようになった」という場合もあります。本人としてはなくさないよう安全な場所へしまったのに、あとでその行動を忘れ、家族から見ると隠したように見えることがあります。財布、通帳、印鑑、鍵、薬など、なくすと困る物ほど生活への影響も大きくなります。
一度、いつもと違う場所へ物を置いたからといって、それだけで判断はできません。以前は自分で管理できていた物を繰り返しなくすようになったか、そのために支払いができない、外出できない、薬が見つからないなど、別の生活まで止まるようになっているかを見ます。
さらに「財布を盗られた」と家族を疑うこともあります。ただし、最初から「認知症だから妄想だ」と決めつけるのも違います。本当に紛失していないかを確認したうえで、自分でしまったことを忘れているのか、同じ物を何度もなくしているのか、特定の人を繰り返し疑うようになったのかを見ていきます。「盗られた」と言われても、最初から認知症によるものと決めず、本当に紛失していないかも確認します。
家族にとっては、自分が疑われれば腹が立つこともあります。しかし、この場面で知りたいのは「誰が正しいか」だけではありません。財布がどこから見つかったのか、本人がそこへしまったことを覚えているのか、同じやり取りが続いているのか。そこを残しておくことで、「最近おかしい」という印象ではなく、実際の変化として確認できます。
料理や着替えなど生活手順が崩れる
「物忘れはあるけれど、まだ生活できているから大丈夫」と思うこともあるでしょう。そこで確認したいのが、以前普通にできていた生活行動が同じように続けられているかです。
料理では、材料を一つ買い忘れたというより、食事の支度の段取りが悪くなる、献立が少なくなる、家事のミスが増えるといった変化があります。認知機能が変化すると、「覚えているか」だけでなく、順番を考えて行動することにも影響が出る場合があります。
「でも、本人はまだ料理をしている。それなら生活できているのではないか」と見ることもできます。そこで、料理をしているかどうかだけではなく、以前と同じように一連の作業ができているかを見ます。今までは複数の料理を同時に作れていたのに、一つの作業が終わらないと次へ進めない、途中で何をしていたのか分からなくなる、といった変化が重なっていないかです。
「時間がかかるようになっただけならどうなのか」。それも一つだけでは分かりません。着替えが遅くなった場合には、身体の動かしにくさや痛み、見えにくさなど別の理由も考えられます。一方で、服を着る順番が分からない、前後や裏表が分からない、以前は一人でできたのに具体的な声かけが必要になったとなれば、変化の内容が違います。
つまり、「遅くなった」という結果だけではなく、なぜ進まないのかを見ることになります。身体は動くのに何から始めればいいか分からないのか、服を手渡せば着られるのか、ひとつずつ声をかければ進めるのか。本人ができているように見えても、実際には家族の声かけがないと生活が進まなくなっていないかまで確認します。
買い物も同じです。必要な物を買い忘れる、家にある物をまた買う、賞味期限切れの食品がたまるといった変化が出ることがあります。前回買った記憶があるのか、在庫を確認できるのか、支払いまでできているのかを見ると、どこまで生活へ影響しているか分かりやすくなります。
「同じ物を買うならメモを持たせればいい」と考えることもできます。メモを見ながら必要な物を選び、支払いまでできるなら、道具を使いながら本人が続けられている部分があります。反対に、メモを確認できない、家にある物との違いが分からない、支払いで困るといった変化まで出ているなら、買い忘れだけの話ではなくなってきます。
買い物の変化が気になる場合は、高齢者の買い物忘れとセルフレジ困難への支援で、買い忘れや同じ物を買う状態から、どのような支援を考えるかも確認できます。
服薬・金銭管理への影響を比べる
物忘れが生活の安全に関わってくるのが、服薬や金銭管理です。「薬を一回忘れた」「財布が見つからない」という単発の出来事と、自分で管理すること自体が難しくなっている状態は分けて考えます。
服薬なら、飲み忘れだけではなく、飲んだことを忘れてもう一度飲もうとする、朝・昼・夕の薬を取り違える、薬の種類を管理できないといった変化があります。金銭では、ATMの操作が分からなくなる、公共料金の支払いができない、現金や通帳を管理できないといった変化が確認されます。
ここで家族が迷いやすいのが、「本人はできていると言っている。では、そのまま任せていいのか」というところです。薬を自分で持っていても、飲んだかどうか毎回分からなくなるなら、薬を保管できることと服薬を管理できることは同じではありません。
お金も同じです。財布を持って買い物へ行けても、必要な金額を理解し、支払いを続けて管理できているかは別に見ます。家族が毎回不足分を補ったり、公共料金は別の家族が管理していたりするなら、本人が一人ですべてを管理している状態とは違います。
「どちらが起きたら深刻なのか」と順位を付けるより、これまで一人で管理できていたものに、どのくらい家族の確認が必要になっているかを見るほうが実際的です。本人が「できる」と言っているかだけでなく、家族の確認がなくても安全に管理を続けられているかまで見てください。
| 確認する場面まだ本人ができていること生活への影響として確認したい変化 | ||
|---|---|---|
| 服薬 | 薬の時間や種類を自分で管理できる | 飲み忘れ、重複して飲もうとする、薬を取り違える |
| 金銭 | 支払い、現金、通帳を自分で管理できる | 支払い忘れ、ATM操作の困難、現金や通帳を管理できない |
| 買い物 | 在庫確認や支払いを自分で行える | 同じ物を繰り返し買う、必要な物を忘れる |
| 生活全体 | 必要な行動を自分で組み立てられる | 複数の生活場面で家族の確認が必要になる |
「まだ一人で暮らしているから問題はない」とも限りません。反対に、家族が少し手伝っているから認知症とも決まりません。物忘れが記憶だけにとどまらず、買い物、電話、料理、服薬、金銭、移動など複数の生活場面へ広がっているかを見てください。
ここで見ると分かりやすいのが、「本人ができていること」と「家族が補っていること」を分けることです。本人は一人暮らしを続けていても、薬は娘が一週間分セットし、通帳や支払いは別の家族が管理し、通院日には電話で何度も確認しているなら、家族の支えも含めて生活が成り立っています。
反対に、多少物忘れがあっても、メモを使いながら薬や予定を自分で管理し、買い物や支払いも続けられている場合もあります。生活している場所だけで決めず、本人が実際に何を自分でできていて、何を家族が補っているのかを見ることが、次の相談にもつながります。
「まだ一人暮らしは続けられているけれど、毎日電話で確認するのは難しい」という家庭では、離れて暮らす家族が安否や生活の様子を確認できる見守りサービスを使う方法もあります。家族が毎日すべてを確認するのではなく、必要な部分だけ外の仕組みで補えるかを考えてみてもよいでしょう。

薬を一度飲み忘れたら認知症を疑うべきですか?

一度の飲み忘れだけでは判断できません。飲んだこと自体を忘れて再び飲もうとする、薬の種類や時間を管理できなくなるなど、服薬管理そのものに変化が出ていないかを確認します。

一人暮らしが続けられていれば認知機能は問題ないのでしょうか?

一人暮らしをしていることだけでは判断できません。買い物、金銭、服薬、食事、電話、外出など、実際にどの生活行動を本人が自分で続けられているかを見る必要があります。

物忘れがあればすぐ施設を考えたほうがいいですか?

物忘れの有無だけで在宅生活か施設生活かを決めることはできません。服薬、金銭、食事、外出などの生活機能と、どの程度見守りや介助が必要なのかを確認します。
急な物忘れや会話の変化は原因を確認
ここまでのような変化が少しずつ増えてきた場合と、「昨日までは普通だったのに今日になって急に会話がおかしい」という場合は同じように考えないでください。
「認知症が急に進んだのでは」と考えるところですが、数時間、数日、数週間という短い期間で急激に状態が変わった場合には、薬の影響、脱水や電解質異常、血糖の異常、感染症、慢性硬膜下血腫など、認知症の通常の進行とは別の原因が関係する場合があります。
ここで最初に確認したいのは、「何がおかしいか」だけではなく「いつから変わったか」です。数か月前から同じ質問が少しずつ増えてきた状態と、前日まで普通に会話していた人が朝から急にぼんやりしている状態では、同じ物忘れとして見ないほうがいいからです。
薬を変更したあとからぼんやりするようになった場合も、「年齢のせい」と決めず、いつ薬が変わり、その後何が変わったのかを確認します。自己判断で薬を止めるのではなく、お薬手帳などで服薬状況を医師や薬剤師へ伝えられるようにします。短期間で急に様子が変わったときは、「認知症が進んだだけ」と家族の中で決めず、変化が始まった時期も含めて確認してください。
「では、ゆっくり進んでいれば認知症なのか」と考えたくなりますが、それも家族だけでは決められません。うつ状態や身体疾患などでも認知機能が低下して見える場合があります。ここで家族がするのは病名を決めることではなく、徐々に変わったのか、急に変わったのか、その前後に何があったのかを具体的にすることです。
たとえば、「最近ずっとおかしい」ではなく、「3か月ほど前から同じ質問が増えた」「薬が変更されたあとから急にぼんやりした」のように時期が分かれば、医療機関へ伝える情報も具体的になります。何が起きたかだけでなく、いつ始まったかを残すことが次の記録にもつながります。
家族はテストせず具体的な出来事を記録
親の物忘れが気になると、「今日は何日?」「昨日何を食べた?」「私の名前は?」と家族が確認したくなるかもしれません。けれど、自宅で問題を出して正解・不正解を数えることと、医療機関で行う認知機能の評価は別です。
家族としては、「どれくらい覚えているのか確かめたい」という気持ちが出ます。そこで毎日のように質問してみても、家族が知りたい生活上の変化まで分かるとは限りません。本人にとっては、自分が試されているようなやり取りになることもあります。
では家族は何をすればいいのでしょうか。役立つのは、親を試すことより、実際に起きた出来事を残すことです。
| 記録する内容書き方の例確認できること | ||
|---|---|---|
| いつ起きたか | 日付や時間帯を残す | 変化の始まりや頻度 |
| 何が起きたか | 同じ質問を短時間に繰り返した | 抽象的な「物忘れ」ではなく具体的な変化 |
| 思い出せたか | ヒントを出しても思い出せなかった | 忘れ方の違い |
| 生活への影響 | 薬を飲んだか分からなくなった | 安全や生活管理への広がり |
| 経過 | 急に始まった、数か月かけて増えた | 急な変化か徐々な変化か |
「最近ボケてきた」「様子がおかしい」という言葉だけでは、何が変わったのか伝わりにくくなります。「朝に伝えた予定を1時間後にまた聞き、予定を伝えたこと自体を覚えていなかった」という形なら、実際に起きたことが分かります。
「そんなに細かく毎日記録するのは大変だ」と感じるなら、記録自体を目的にする必要はありません。家族が「これは前と違う」と感じた出来事だけでも、日付と内容を残しておけば、後から振り返りやすくなります。
同じ質問をしたなら、何分くらいで繰り返したのか。予定を忘れたなら、時間だけだったのか、約束したこと自体を覚えていなかったのか。財布がなくなったなら、どこから見つかったのか。こうした具体的な出来事が残っていれば、「最近おかしい」という一言より状態を説明しやすくなります。
また、薬や金銭、外出など安全に関係する変化があった場合は、そのことも一緒に残しておくと生活への影響が分かります。単なる物忘れとして記録するのではなく、「何ができなくなったのか」「家族がどこを補ったのか」まで書けると、その後の相談でも使いやすくなります。
家族の記録は親を採点するためではなく、いつから何が変わったのかを医療機関などへ具体的に伝えるための材料です。
こうした記録は、家族が親を採点するためのものではありません。いつから何が変わったのかを家族自身が確認し、必要になったとき医療機関へ伝えるための材料です。
受診や相談につなぐ変化の目安
最後に、「どこまで変わったら相談したほうがいいのか」です。ここも一つの症状に線を引くのではなく、以前との違いが続き、複数の生活場面へ広がっているかを見ます。
たとえば、同じ質問を短時間に繰り返すだけでなく、約束したことそのものを忘れる、日時や場所の間違いが増える、慣れた場所で迷う、話を理解しにくくなる、料理や家事の段取りがうまく進まなくなる、薬やお金を管理できなくなるといった変化が重なっているなら、年齢だけで片付けず相談する材料になります。
「まだ食事もできるし、自分で着替えられる。それなら、もう少し様子を見てもいいのではないか」と考えることもあるでしょう。そこで、食事や着替えだけを見るのではなく、生活全体を見ます。着替えはできても薬は家族が管理している、食事はできても買い物や支払いは家族が代わっているなら、本人だけで生活のすべてを続けている状態とは違います。
反対に、多少物忘れがあっても、予定をメモで確認し、服薬や買い物、支払いも自分で続けられている場合もあります。だから「物忘れがあるか」「一人暮らしか」だけで決めず、実際にどの生活行動ができていて、どこから家族の支援が必要になっているのかを見ます。
「家族の確認が必要な場面が増えてきて、このまま一人暮らしや在宅生活を続けられるのか分からない」という段階なら、施設へ入ると決める前でも、老人ホームの相談サービスを使って今後の選択肢を確認できます。すぐに入居するためではなく、本人の状態や家族の負担に合う施設にはどんな種類があるのか、費用はどのくらいかを知っておくだけでも、その後の選択がしやすくなります。
「認知症と決まっていないのに病院へ行っていいのか」という疑問も出てきます。病名を家族が決めてから受診する必要はありません。かかりつけ医やもの忘れ外来などへ、実際に起きている変化を伝えて相談できます。受診先で迷う場合は、親の様子がおかしい時は何科?受診先と医師へ伝えるポイントで、受診先と医師へ伝える内容を確認できます。
また、「認知症になる前の段階なら何もしなくていい」というわけでもありません。MCI(軽度認知障害)は認知症そのものとは区別され、認知機能に低下があっても日常生活への大きな支障がない状態が含まれます。MCIのすべてが認知症へ進行するわけでもありません。
ここで家族が決めるのは、「普通の老化か、MCIか、認知症か」という名前ではありません。今の親に何が起きていて、生活のどこに変化が出ているのかを具体的にし、その情報を相談先へ伝えます。
同じ質問だけなのか、予定管理も難しくなったのか。料理はできるけれど薬の管理は家族が必要なのか。急に変わったのか、数か月かけて少しずつ変わったのか。そこまで分かっていれば、家族が病名を決めなくても相談できます。
加齢による物忘れ、認知症、MCIの違いを公式情報でも確認したい場合は、国立長寿医療研究センター「認知症とMCI」で、忘れ方や日常生活上の変化について確認できます。

同じ質問が増えたら、すぐ受診したほうがいいですか?

同じ質問だけで判断するのではなく、最近の出来事そのものを忘れる、日時や場所を取り違える、生活管理が難しくなるなど、ほかの変化も確認してください。以前との明らかな違いが続いている場合は相談する材料になります。

家族だけで相談することはできますか?

認知症に関する相談先には、かかりつけ医や医療機関のほか、地域包括支援センターなどがあります。窓口の名称や利用方法は地域によって異なります。

物忘れがあっても本人が生活できていれば様子見でよいですか?

物忘れの有無だけでは決められません。服薬、金銭、食事、外出、電話などを本人がどこまで安全に続けられているか、家族の確認や見守りがどの程度必要になっているかまで見てください。

親が物忘れを増やした時に覚えておきたいこと
親の物忘れが増えてくると、「年齢による変化なのか」「認知症を考えたほうがいいのか」と答えを一つに決めたくなります。ただ、見るべきなのは忘れた回数だけではありません。食事の内容を忘れたのか、食べたこと自体を覚えていないのか。人の名前だけが出てこないのか、その人が誰なのか分からなくなっているのか。予定を忘れても、カレンダーを見れば自分で準備できるのか、説明しても予定そのものが残らないのか。こうして忘れ方を具体的に分けると、同じ「物忘れ」でも違いが見えてきます。
もう一つ確認したいのが、生活への影響です。料理をしている、着替えられる、一人暮らしを続けている。それだけなら、まだ大丈夫に見えることがあります。けれど、薬は家族が確認し、お金は別の家族が管理し、通院日には何度も電話しているなら、本人だけで生活が成り立っている状態とは違います。反対に、多少忘れることがあっても、メモやカレンダーを使いながら予定や買い物を続けられている場合もあります。
だから家族がすることは、親に問題を出して認知症かどうかを当てることではありません。忘れた回数を数えるより、同じ質問をどのくらいの間隔で繰り返したのか、ヒントがあれば思い出せたのか、薬やお金、買い物など日常のどこに家族の確認が必要になったのかを見るほうが、その後の判断材料になります。「いつから」「何が」「以前とどう変わったのか」を生活の中で見ていくことです。急に会話がおかしくなった場合と、数か月かけて少しずつ変わった場合も分けて考えます。
家族だけで病名を決める必要はありません。本人がまだできていることが多くても、以前とは違う変化が続いているなら、その事実をそのまま持って相談すれば大丈夫です。病名を先に決める必要はありません。具体的な出来事を残しておけば、相談するときにも「最近おかしい」ではなく、実際に起きている変化として伝えられます。親を責めず、今できていることと支えが必要になったことを一つずつ確認し、必要なら次の相談や支援へつなげていく。それが、親と家族の生活を守るための現実的な進め方です。
健さんの視点コラム
親が「自分でできる」と言っているのに、家族から見ると少し危なっかしい。物忘れが増えてきた家庭では、この食い違いがいちばん悩ましいところかもしれません。本人には、これまで自分で買い物をし、薬を飲み、お金を管理してきた積み重ねがあります。少し忘れたからといって、家族から急に「もう任せられない」と言われれば、納得しにくいのも自然です。
一方、家族には別の見え方があります。薬を飲んだか分からなくなっている、財布を何度も探している、通院日の確認を毎回しなければならない。本人は「できている」と思っていても、実際には家族の確認が入ることで生活が続いている場合があります。
そこで、「本人ができると言うなら任せる」「家族が心配だから全部代わる」の二択にしないことが大切です。薬なら、自分で保管しているかではなく、時間と種類を確認して飲み、飲んだことまで把握できているかを見る。買い物なら、一人で店へ行けるかだけでなく、必要な物を選び、家にある物と重ねて買っていないか、支払いまでできているかを見る。予定なら、カレンダーに書いてあるだけではなく、それを見て自分で準備へつなげられているかを確認します。
こうして見ていくと、家族が手を出す場所も決めやすくなります。薬は一週間分だけ家族が準備する、予定は前日に一度だけ確認するなど、本人が続けられる部分は残しながら、難しくなったところだけ補う方法もあります。反対に、服薬の重複や金銭管理の混乱など、安全や生活に直接関わる変化が増えているなら、家族の確認を一段増やす必要があります。
家族が声をかけるときも、「もうできないから任せて」と一気に取り上げるより、「薬だけ一緒に確認しよう」「病院の日だけ前日に確認しよう」と、困っている場面を具体的にしたほうが話を進めやすくなります。本人が嫌がるなら、何を手伝われるのが嫌なのかも確認します。管理そのものを任せたくないのか、毎回口を出されるのが嫌なのかで、家族の関わり方は変わります。
人生健康第一とは、本人の自立を何でも一人でやらせることと考えるのではなく、できることは続けてもらい、危なくなったところは早めに補うことです。本人の生活を守ることと、家族が無理なく支え続けられることの両方が必要です。
もし家族の確認が薬だけだったのに、予定、お金、買い物、通院へと増えてきたなら、それは家族側の負担も変わってきたということです。その時点で、今までと同じやり方を家族だけで続ける前提にしなくて構いません。本人ができる部分を残しながら、家族だけでは補いきれないところに外の支援を入れる。そうすれば、本人からすべてを取り上げずに、家族の負担も減らしながら生活を続ける方法を考えられます。
家族がすべてを代わるのが難しくなってきた場合は、通院や外出、日常生活の付き添いなど、必要なところだけ介護保険外サービスを利用する方法もあります。「施設へ入るほどではないけれど、家族だけで全部を支えるのは難しい」という段階で使える選択肢の一つです。
介護は、家族だけで抱え続けるものではありません。私たち介護職は、ご本人だけでなく、支えるご家族のためにもいます。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の介護方針や制度利用を断定するものではありません。介護の方法や利用できる制度、支援内容はご本人の状態や地域の状況によって異なります。具体的な判断については、医療機関、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどの専門職へご相談ください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
親の介護で困ったときに『まずここを見れば分かる』と思ってもらえる記事を、これからも増やしていきます。
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