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親の退院後にトイレ・お風呂が不安な時の手すりと安全対策

退院後の高齢の母が自宅のトイレと浴室付近で手すりを使い、家族に見守られながら安全に移動している様子 家族と介護サポート

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この記事を書いた人:健さん|元プロアスリート / 元納棺師 / 介護福祉士 / 睡眠栄養指導士 初級(一般社団法人睡眠栄養指導士協会 認定)|「人生健康第一」を伝えるブログメディア運営

親の退院が決まり自宅へ戻れることになっても、「一人でトイレまで行けるのか」「便座から立ち上がれるのか」「お風呂で滑らないか」と考え始めると不安は尽きません。入院前には普通にできていた動作でも、入院中の安静や病気の影響によって筋力やバランスが変わり、退院直後は自宅の段差や狭さが思った以上の負担になることがあります。

私は元プロアスリートとして体と向き合い、納棺師として人の命の終わりを見届け、現在は介護福祉士として日常の健康と生活を支える現場にいます。そんな経験から辿り着いた信念があります。それは人生健康第一です。退院後の生活では「手すりを付ければ安心」と一つの用品だけで考えるのではなく、親が実際にどの動作で困っているのかを見ることが大切です。

この記事では、退院後の親のトイレとお風呂を中心に、立ち座り、方向転換、夜間移動、浴槽のまたぎ動作などをどう確認するのか、固定式手すりと据置型用品をどう考えるのか、介護保険を利用した住宅改修や福祉用具について順番に説明します。用品を先に買うのではなく、必要な場所と動作を絞ってから準備する流れを整理していきます。

最初の判断軸は「トイレや浴室に手すりがあるか」ではありません。寝室から移動できるか、扉を開けられるか、方向転換できるか、立って衣服を操作できるか、便座やいすから立てるかという一連の動作を確認します。どこで動きが止まるのかが分かれば、手すり、福祉用具、住宅改修、見守りのどれを優先するか考えやすくなります。

この記事のポイント

  • 親の退院後にトイレで確認する動作と危険箇所がわかる
  • お風呂で手すり以外に確認したい安全対策が理解できる
  • 固定式手すりと据置型用品を選ぶ判断軸がわかる
  • 住宅改修や福祉用具を相談するタイミングが理解できる

退院後のトイレとお風呂は動作ごとに確認する

  • トイレは移動から衣服操作まで分ける
  • お風呂は歩く・またぐ・座るを見る
  • 夜間のトイレは昼間と別に考える
  • 手すりを買う前に困る動作を絞る

トイレは一連の動作を確認する

親の退院後にトイレが不安な時、「トイレまで歩けるか」だけを確認しても十分ではありません。寝室や居間からトイレまで移動し、扉を開け、便器の前で身体の向きを変え、衣服を下げて便座へ座り、排泄後に立ち上がって衣服を整え、手を洗って戻るところまでがトイレ動作です。途中の一つだけが難しくても、一人での排泄が不安定になることがあります。

例えば、廊下は杖で歩けても便器の前で小さく方向転換するとふらつく人がいます。立っていることはできても、両手を衣服の上げ下げに使うと支えがなくなり不安定になる場合もあります。反対に、歩行自体は不安定でも、トイレまで付き添えば便座への着座や立ち上がりは自分で行える人もいます。同じ「トイレが不安」という言葉でも必要な支援は違います。

「便座の横に手すりを付ければ、それで大丈夫じゃない?」

便座からの立ち上がりが問題なら手すりは有力な選択肢ですが、それだけで解決するとは限りません。トイレまでの移動、入口の幅、扉の開閉、便器前の方向転換、衣服操作にも問題がないかを一緒に確認する必要があります。

特に車いすや歩行器を使う場合は、手すりを追加したことで移動スペースが狭くならないかも確認します。据置型手すりの土台と歩行器や車いすの脚部がぶつかる、介助者が立つスペースがなくなるといった問題も起こり得ます。広い病院のトイレで動けたからといって、自宅の狭いトイレでも同じとは限りません。

トイレ対策は「便座から立てるか」だけではなく、移動・方向転換・衣服操作・着座・立ち上がりまで一連の動作で確認します。

家族が確認する時は、できるだけ普段使う履物と杖、歩行器などを使い、いつもの生活に近い条件で見ます。本人が無理をして「できる」と見せようとすることもあるため、一度できたかどうかより、毎日安全に繰り返せる動作かという視点が必要です。

お風呂は歩く・またぐ・座るを見る

浴室では、トイレ以上に複数の動作が続きます。脱衣所から浴室へ入り、濡れた床を移動し、身体を洗うために座り、必要なら立ち上がり、浴槽の縁をまたぎ、浴槽内へ身体を下ろします。最後には浴槽内から再び立ち上がり、浴槽の外へ戻らなければなりません。どの動作も入院前と同じとは限りません。

「浴槽をまたげない」と「浴槽の中から立ち上がれない」は別の問題です。前者では浴槽用手すりやバスボードなどが候補になることがありますが、後者では浴槽台など別の用品を検討する場合があります。身体を洗う時に立っていることが難しければ、シャワーチェアで座って洗う方法もあります。どの用品が必要かは、できない動作によって変わります。

「手すりを一つ付ければ、入浴も一人でできるようになるかな?」

手すりだけで安全になるとは限りません。浴槽をまたぐ脚の高さ、座った姿勢を保てるか、濡れた床で方向転換できるか、浴槽底から立ち上がれるかまで確認してから判断します。

さらに浴室では、住宅環境だけでなく温度や体調にも注意が必要です。脱衣所と浴室の温度差、熱すぎる湯、長時間の入浴、食後すぐや飲酒後の入浴などは身体への負担につながります。消費者庁も高齢者の入浴事故防止について注意喚起しており、住宅の安全対策と体調管理の両方を見る必要があります。

退院直後に歩行や立ち上がりが不安定な場合は、以前と同じ入浴方法へすぐ戻そうとせず、安全にできる動作から考えてください。

浴槽へ入ることを一時的に控え、シャワーチェアを使って座位で身体を洗うなど、身体状態に合わせて方法を変える考え方もあります。「以前は毎日湯船に入っていたから」と元の生活へ一度に戻すより、退院直後の体力を基準に組み立てる方が安全につながります。

夜間のトイレは昼間と別に考える

昼間にトイレまで一人で歩ける親でも、夜間は条件が変わります。寝起き直後で身体が動きにくい、照明が暗い、眼鏡をかけていない、尿意で急いでいる、杖や歩行器が手元にないなど、転倒につながる条件が重なりやすくなります。家族が起きている昼間と、本人だけで動く深夜では同じ動線でも安全性が違います。

夜間対策では、寝室からトイレまでの距離だけでなく、足元灯を付ける、床の荷物やコードをなくす、杖や歩行器の置き場所を固定する、めくれやすいマットを外すなど、小さな環境調整が重要です。手すりを設置しても、手すりへ到達するまでの廊下で転倒してしまえば十分な対策にはなりません。

「昼間は普通に行けているから、夜も同じで大丈夫だと思っていました。」

そこは分けて考えた方が安全です。昼間の動作が安定していても、夜間は眠気や暗さ、急いで動くことが加わるため、実際に夜の条件を想定した確認が必要です。

寝室からトイレまでが遠く、夜間の歩行が明らかに不安定であれば、ポータブルトイレを含め別の方法を検討することもあります。ただし、ポータブルトイレ自体を立ち上がり用の手すり代わりに使うなど、本来とは異なる方法で使用するのは避けます。用品にはそれぞれ目的があり、安定して見える物でも身体を支える用途に適しているとは限りません。

夜間は「昼間に歩けるから大丈夫」ではなく、暗さ・寝起き・尿意・杖の位置まで含めて別条件として確認します。

夜だけ家族が付き添えば、昼間は一人でも大丈夫ですか?

健さん
健さん

昼間も、トイレまでの移動や方向転換、立ち上がりを一度確認してください。夜間だけ危険なのか、日中にも不安定な動作があるのかで必要な支援が変わります。

夜中のトイレが心配ならポータブルトイレをすぐ買ってもいいですか?

健さん
健さん

選択肢にはなりますが、寝室内の設置場所、立ち上がり動作、後始末、本人が受け入れられるかまで確認してから選ぶ方が現実的です。

退院した当日から家の中を歩かせて確認してもいいですか?

健さん
健さん

無理に試す必要はありません。病院から示された移動方法や介助量を守り、必要なら家族だけで確認せず理学療法士、作業療法士、ケアマネジャーなどへ相談してください。

一人暮らしの高齢の母が自宅で転倒し、離れて暮らす家族が見守りの必要性を考えている様子

手すりを買う前に困る動作を絞る

退院が近づくと、家族は「何か準備しておかなければ」と焦りやすくなります。ホームセンターや通販サイトで手すり、シャワーチェア、滑り止め用品を見ると、とりあえず先に買っておきたくなるかもしれません。しかし、手すりはどこに付いていても役立つわけではありません。立ち上がり、立位保持、歩行、方向転換、段差昇降など、支えたい動作によって必要な位置や形が変わります。

例えば便座から立ち上がる時に身体を前へ移動させる人と、横の支持物へ強く頼る人では使いやすい位置が違います。片側に麻痺がある人では、どちらの手で支えるのかも重要です。浴室でも、浴槽をまたぐ時に握りたい位置と浴槽内から立ち上がる時に必要な位置は同じとは限りません。

「退院まで日がないから、とりあえず通販で買っておきたいんです。」

工事不要の用品を仮に使う方法はありますが、寸法と本人の動作を確認せず選ぶのは避けた方が安全です。急いでいる時ほど、何の動作を助けたいのかを一つずつ整理してください。

市販されている介護用品には、便器周囲へ設置するトイレ用手すり、浴槽縁へ固定する浴槽用手すり、シャワーチェア、浴槽台などさまざまな種類があります。商品によって設置できる便器や浴槽の形、寸法、使用者体重などの条件が異なるため、商品名だけで判断せず仕様を確認します。

手すりや入浴用品は「置けば安全」ではなく、本人の動作と住宅環境に合わない物を置くことで新たな転倒要因になる場合があります。

手すり以外の介護用品も確認したい場合は、親の歩行を支える福祉用具の選び方も参考にしてください。屋内と外出では必要な用具が異なるため、退院後の生活全体を見ながら選ぶと整理しやすくなります。

手すりと住宅改修は状態と家の条件で選ぶ

  • 固定式と据置型の違いを知る
  • 介護保険を使う前に相談する
  • トイレと浴室用品を条件で選ぶ
  • 家に戻ってから再評価する

親の介護で迷ったときに役立つ情報を、これからも分かりやすく発信していきます。

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固定式と据置型の違いを知る

手すりは大きく考えると、壁や柱などへ固定する方法と、工事をせず床へ置いたり便器周囲へ設置したりする方法があります。介護保険では、工事を伴わない一定の手すりは福祉用具貸与の対象となり、壁や柱へ取り付ける手すりは住宅改修として扱われる場合があります。どちらが優れているという話ではなく、本人の身体状態と住宅条件に合う方法を選びます。

固定式は位置が決まれば動きにくく、廊下やトイレ、浴室などで継続的に支えとして使用できます。一方で、取り付け位置を誤ると簡単に移動できません。据置型は工事なしで導入しやすく、退院直後の身体状態を見ながら位置を調整できる利点がありますが、土台部分が床にあるため、足や歩行器が当たらないか確認する必要があります。

「賃貸だから工事できないし、据置型しか選べませんよね?」

据置型は有力な選択肢ですが、賃貸だから必ず住宅改修ができないとは限りません。住宅の所有関係や管理者の承諾などを確認し、ケアマネジャーや自治体、福祉用具専門相談員へ相談してから判断します。

また、退院直後は身体機能が変化する可能性があります。数週間のリハビリや生活再開によって動きが良くなる場合もあれば、疲労や病状によって介助量が増えることもあります。今の状態を前提に固定工事を急ぐより、将来の動作変化も考えながら選ぶ方が使いやすいことがあります。

固定式住宅改修と工事不要の手すりは制度上の扱いも異なるため、購入や工事の契約前にケアマネジャーや福祉用具事業者へ確認します。

確認項目固定式手すり据置型・工事不要
設置方法壁・柱などへ固定床や便器周囲へ設置
位置変更簡単には変えにくい比較的調整しやすい
向く場面使用位置が明確退院直後の調整段階
注意点下地・位置確認が必要土台へのつまずきに注意
介護保険住宅改修の対象になる場合貸与対象になる製品あり
確認相手ケアマネ・施工者など福祉用具専門相談員など

据置型手すりは家族が使いやすい場所へ動かしてもいいですか?

健さん
健さん

本人がいつもの位置を頼りにしている場合、家族が勝手に動かすと危険です。位置変更が必要なら本人の動作を確認し、必要に応じて福祉用具専門相談員へ相談してください。

住宅改修をした後で場所が合わなかったらどうなりますか?

健さん
健さん

追加工事が必要になる可能性があります。本人が実際にどの手でどこを支えるかまで確認し、施工前に位置を具体的に決めることが重要です。

要支援でも手すりの相談はできますか?

健さん
健さん

相談できます。身体状況や用具の種類によって給付の扱いが変わるため、介護度だけで自己判断せず担当者へ確認してください。

介護保険を使う前に相談する

介護保険の住宅改修では、手すりの取付け、段差の解消、滑り防止や移動を円滑にするための床材変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替えなどが対象となる場合があります。支給限度基準額は原則20万円ですが、「対象工事なら先に施工して後から申請すればよい」という仕組みではありません。

住宅改修では、住宅改修が必要な理由書、見積り、施工前の状態を確認する資料などが必要となり、原則として工事前の手続きが重要です。自治体によって申請書式や支払い方法などが異なるため、全国共通の対象工事と地域ごとの手続きを分けて考えます。制度の対象については、厚生労働省の福祉用具・住宅改修の案内で確認できます。

「退院まで数日しかないから、先に工事してしまった方が早いですよね?」

急いでいても、介護保険を利用する可能性があるなら先に相談してください。工事を発注してから制度利用を考えるのではなく、ケアマネジャーや自治体へ確認して手順を整理する方が安全です。

退院まで時間がない場合には、工事だけにこだわる必要もありません。一時的に工事不要の手すりや福祉用具を利用し、自宅での動作が分かってから住宅改修を検討する方法もあります。逆に、入院中から自宅のトイレや浴室の写真、寸法を準備し、リハビリ職やケアマネジャーと相談できれば、退院前から具体的な対策を進めやすくなります。

介護保険の住宅改修を検討する場合は、工事を発注する前の相談と申請確認を優先してください。

退院後の相談先や介護認定の進め方も合わせて確認したい方は、親の退院後はケアマネにいつ相談?介護認定が間に合わない時もご覧ください。住宅環境だけでなく、退院後の支援体制と一緒に考えると準備の順番が整理しやすくなります。

退院後の生活について高齢の母と家族が自宅で相談員と資料を見ながら介護サービスや支援内容を相談している様子

トイレと浴室用品を条件で選ぶ

工事をしない介護用品を選ぶ場合も、形や価格だけで決めないことが大切です。トイレ用手すりには便器周囲へ設置するタイプや床面へベースを置くタイプなどがあり、便器の形、温水洗浄便座の操作部、トイレ内の幅などによって設置できるかが変わります。左右の手すりが必要なのか片側だけでよいのかも本人の動作次第です。

浴槽用手すりも浴槽縁へ固定できれば何でもよいわけではありません。浴槽縁の幅、形状、材質、エプロン部分の構造などによって取り付け条件が違います。現在販売されている浴槽用手すりでも対応できる浴槽縁の寸法が製品ごとに定められており、購入前に設置条件を確認する必要があります。

「通販ならレビューが多い商品を選べば大きく外れないですよね?」

レビューより先に、親の身体状態と自宅へ設置できるかを確認してください。他の人には使いやすい商品でも、浴槽の形やトイレの広さ、親の身長、使う手が違えば合わないことがあります。

入浴用品では、浴槽用手すりだけでなくシャワーチェア、浴槽台、入浴台なども選択肢です。厚生労働省が示す介護保険の特定福祉用具には、一定の入浴補助用具も含まれています。制度利用を考える場合は、一般の通販で先に購入する前に、指定を受けた福祉用具販売事業者やケアマネジャーへ対象条件を確認してください。

介護用品は「人気商品」より、本人の動作・身体寸法・トイレや浴槽の寸法・設置条件が合っているかを優先して選びます。

介護保険とは別に、自費で購入した方が早い用品や、家族が補助的に用意したい滑り対策用品などもあります。Amazonや楽天などで探す場合も、浴槽縁の幅、手すり高さ、耐荷重、設置方法、使用上の注意を確認し、サイズが合うことを確かめてから選びます。


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なお、通販で買える用品と介護保険で貸与・購入する用品は同じように見えても利用方法が異なります。退院直後で身体状態が安定していない時は、福祉用具専門相談員に調整してもらえる貸与用品が適するケースもあるため、価格だけで決めず使い方まで比較してください。

困っている動作候補になる対策確認すること
便座から立てない手すり・便座高さ調整足位置・使う手
トイレで方向転換しにくい配置変更・動線確保便器前の広さ
夜間歩行が不安足元灯・動線整理寝室からの距離
身体を洗う時に不安定シャワーチェア座位・立ち上がり
浴槽をまたげない浴槽用手すり・入浴台浴槽縁の形と高さ
浴槽内から立てない浴槽台など座位保持・脚力

商品選びでは「手すり」「入浴いす」といった名称だけを見ず、その用品でどの動作を補うのかを先に決めます。目的が明確なら、不要な用品をいくつも購入することを避けやすくなり、狭いトイレや浴室へ物を増やしすぎることも防げます。

家族が介助する場合は、本人だけでなく介助者が動けるスペースも重要です。親が手すりにつかまって立てても、家族が横へ入れない、後ろから支えられない、扉が介助者にぶつかるという環境では、毎日の介助が難しくなります。本人と家族の両方が無理なく動けることを基準にしてください。


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家に戻ってから再評価する

退院前に十分準備しても、実際に自宅へ戻って初めて分かる問題があります。病院では歩けていたのに自宅の廊下では壁や家具を避けるためにふらつく、トイレの扉を開けながら身体を支えられない、浴室でシャワーチェアを置くと家族が介助する場所がなくなるなど、図面や写真だけでは見えなかった条件が出てくることがあります。

そのため、退院時に決めた環境を完成形と考えないことが大切です。最初の数日から数週間は、親がどこで止まるか、何につかまるか、どの時間帯に疲れるか、介助する家族が無理な姿勢になっていないかを見ます。状態が変われば福祉用具の位置や種類を見直し、必要なら住宅改修を追加で検討します。

「せっかく準備したのに、また変えるのは失敗みたいで嫌ですね。」

見直しは失敗ではありません。退院直後は本人の身体状態そのものが変化する時期なので、実際の生活に合わせて調整することが安全対策の一部です。

施設介護の現場でも、普段は安定して歩いている高齢者が、その日の体調や床の状態、履物、足元環境など複数の条件が重なることで転倒することがあります。昨日できたから今日も同じとは限りません。特に退院後は疲労や体調の波もあるため、できる・できないを一回の動作だけで判断しないことが重要です。

退院時の環境を完成形にせず、実際の生活で困る場所が見えたら手すり・用品・介助方法を見直します。

親が「大丈夫」と話していても、壁や家具へ何度も手を伸ばす、立ち上がる時に勢いをつける、トイレから出た後に息が切れている、入浴後に強く疲れているなど、言葉以外の変化も確認材料になります。家族だけで判断しにくければ、ケアマネジャーやリハビリ職、福祉用具専門相談員へ実際の状況を伝えてください。

手すりを使わず壁や家具につかまって歩けていれば様子見でもいいですか?

健さん
健さん

家具につかまらないと歩けない状態なら、移動が安定しているとは言い切れません。家具が動く危険もあるため、どこで支えが必要なのか確認してください。

退院後に動きが良くなったら手すりは外してもいいですか?

健さん
健さん

自己判断で急に外すより、現在の立ち上がりや歩行を確認してから見直します。貸与用品なら福祉用具専門相談員へ相談すると判断しやすくなります。

本人が手すりを嫌がる場合はどうすればいいですか?

健さん
健さん

「危ないから付ける」と押し切るだけでなく、どの動作が楽になるのか本人と一緒に試してください。本人が効果を実感できると受け入れやすくなる場合があります。

高齢の男性が自宅で歩行器を使い、家族と支援スタッフが歩き方を確認している様子

親の退院後は手すりより先に生活動作を確認する

親の退院後にトイレやお風呂が不安な時は、最初から「どの手すりを買うか」で考えないことが大切です。トイレまで移動できるか、便器の前で方向転換できるか、衣服を操作できるか、便座から立ち上がれるか。浴室では濡れた床を歩けるか、シャワーチェアへ座れるか、浴槽をまたげるか、浴槽内から立ち上がれるかと、一連の生活動作を細かく確認します。

そのうえで、支えが必要な場所が明確なら、固定式手すり、据置型手すり、シャワーチェア、浴槽用手すり、浴槽台などから必要な対策を考えます。固定式と工事不要型にはそれぞれ利点と注意点があり、住宅の広さ、本人が使う手、介助者の動き、退院後の身体機能の変化によって適する方法は変わります。一つの用品ですべてを解決しようとしないことが重要です。

また、昼間に歩ける親でも夜間は別に確認します。寝起き、暗さ、尿意、眼鏡の有無、杖や歩行器の位置が重なると、昼間より転倒しやすくなる可能性があります。足元灯、床の整理、動線短縮など、手すりを増やす以外の対策も組み合わせます。浴室では住宅環境だけでなく、湯温や入浴時間、本人の体調も安全性に関係します。

介護保険を使った住宅改修や福祉用具を検討する場合は、先に購入や工事を決めず、ケアマネジャー、自治体、福祉用具専門相談員などへ相談します。退院まで時間がない時でも、工事不要用品を一時的に使う、写真や寸法を専門職へ見せるなど準備方法はあります。退院した時点ですべてを完成させる必要はありません。

自宅生活が始まった後も、実際に親がどこでふらつくか、どの動作で疲れるか、介助する家族が無理な姿勢になっていないかを確認してください。退院時に決めた方法を固定せず、必要なら用品や環境を変えていくことが現実的です。親本人の安全だけでなく、支える家族が無理なく続けられる環境まで含めて整えることが、在宅生活を続ける土台になります。

健さんの視点コラム

退院後のトイレやお風呂は、家族から見ると「手すりさえあれば何とかなるのでは」と考えやすい場所です。けれども実際の生活では、手すりそのものより、その手すりまでどう移動するのか、どの手でつかまるのか、つかんだ後に身体をどう動かすのかという部分が重要になります。

本人には「今まで自分でできていた」という気持ちがあります。家族には「転んでほしくない」「また入院してほしくない」という気持ちがあります。本人の自立を守りたい思いと家族の安全への不安がぶつかると、手すり一つを付けることでも話がまとまらない場合があります。だからこそ、危ないから禁止するという話だけで終わらせず、どの動作を少し楽にしたいのかを一緒に見ることが大切です。

専門職や福祉用具は、本人からできることを奪うために使うものではありません。本人が安全にできる部分は残し、難しい部分だけを支えるための選択肢です。家族もすべてを直接介助する必要はなく、環境調整や福祉用具を使うことで、本人と家族の双方の負担を小さくできることがあります。

人生健康第一とは、以前と同じ生活へ無理に戻すことではありません。今できる動作を確認し、危険なところには支えを足し、状態が変われば方法も変えていくことです。本人ができることを残しながら、転倒や無理な介助を減らす。その積み重ねが、退院後の生活を続けるための現実的な安全対策になります。

家族だけでトイレや入浴の安全を判断するのが難しければ、写真や寸法、実際に困っている動作を整理して専門職へ伝えてください。「トイレが心配です」だけでなく、「便座から立つ時に右側へ倒れそうになる」「浴槽をまたぐ時だけ脚が上がらない」と具体的に伝えることで、必要な支援を検討しやすくなります。

介護は、家族だけで抱え続けるものではありません。私たち介護職は、ご本人だけでなく、支えるご家族のためにもいます。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の介護方針や制度利用を断定するものではありません。介護の方法や利用できる制度、支援内容はご本人の状態や地域の状況によって異なります。具体的な判断については、医療機関、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどの専門職へご相談ください。

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