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この記事を書いた人:健さん|元プロアスリート / 元納棺師 / 介護福祉士 / 睡眠栄養指導士 初級(一般社団法人睡眠栄養指導士協会 認定)|「人生健康第一」を伝えるブログメディア運営
「親が旅行へ行きたいと言っているけれど、自分は仕事や家庭の都合で付き添えない」「以前より歩く力が落ちて、家族だけで遠出させるのは心配」。親の旅行には、行かせてあげたい気持ちと安全への不安が同時に出てきます。近所への外出とは違い、旅行では長時間の移動、トイレ、食事、服薬、宿泊、入浴、夜間の見守りまで考えなければなりません。
私は元プロアスリートとして体と向き合い、納棺師として人の命の終わりを見届け、現在は介護福祉士として日常の健康と生活を支える現場にいます。そんな経験から辿り着いた信念があります。それは人生健康第一です。親の旅行も「高齢だからもう無理」と年齢だけで止めるのではなく、今できることと支援が必要なことを分けて考えると、実現できる方法が見つかる場合があります。
この記事では、親の旅行に付き添えないときに最初に確認すること、一般的な外出付き添いと介護旅行サービスの違い、日帰りと宿泊で増える負担、料金の比べ方、交通・宿泊・服薬・体調変化への備え、事業者へ相談するときに伝える内容まで順番に整理します。
最初の判断軸は「旅行へ行けるか、行けないか」ではありません。自宅を出てから帰宅するまでを細かく分け、歩行、移乗、排泄、食事、服薬、休憩、入浴、夜間介助のどこに支援が必要なのかを見ることです。家族が付き添えない部分だけを外部へ頼む方法も含めて考えていきましょう。
- 親の旅行前に確認する生活動作と体力がわかる
- 通常の外出付き添いと介護旅行サービスの違いが理解できる
- 旅行費用を比較するときに見る項目がわかる
- 家族が付き添えない場合の支援の組み合わせ方が理解できる
親の旅行前に確認したいこと
- 年齢より生活動作を確認する
- 短時間外出と旅行を分ける
- 必要な介助を工程で分ける
- 日帰りと宿泊の違いを見る
- 家族が担う範囲を決める
年齢より生活動作を確認する
親が旅行へ行けるかを考えるとき、年齢や要介護度だけで判断すると必要な支援を見落とします。同じ80歳でも、駅構内を自力で歩ける人と、自宅では歩けても屋外では車いすが必要な人では準備が違います。要介護認定を受けていても、必要な介助が分かっていれば外出できる人もいます。
まず確認したいのは、自宅内と屋外での歩行、杖・歩行器・車いすの使用、玄関の段差、車や電車への乗り降り、続けて歩ける距離、長時間座っていられる時間です。さらにトイレ、食事、更衣、服薬を普段どの程度一人で行っているかも見ます。
普段できていることでも、旅行では同じようにできるとは限りません。駅には人混みがあり、観光地には坂道や長い通路があります。ホテルではベッドやトイレの位置も自宅と変わります。旅行中は一つの動作を一度行うだけでなく、朝から夕方まで移動が続くため、後半ほど疲労が出やすくなります。
認知症がある場合は身体能力だけでは決められません。知らない場所で混乱しやすいか、トイレの場所が分からなくならないか、一人になる時間があっても大丈夫か、予定変更に強い不安が出ないかなども確認します。「普段家では大丈夫」と「旅行先でも大丈夫」は分けて考えます。
「まだ自分で歩けているから、普通の旅行でも大丈夫じゃない?」
歩けることだけでは判断できません。旅行で見るのは、歩けるかどうかに加えて、どのくらい歩くと疲れるか、疲れた後も安全に移動できるかです。
例えば自宅から近所の店まで歩けても、大きな駅で乗り換えをし、観光地を歩き、夕方にホテルまで移動するとなれば負担は大きく変わります。駅構内だけ車いすを使う、観光地間をタクシーにする、午後の予定を一つ減らすなど、部分的に支援を足すこともできます。
旅行できるかは年齢だけで決めず、自宅を出てから帰宅するまでの生活動作と疲労を見て判断します。
本人自身が旅行を希望しているかも確認してください。家族が「今のうちに連れて行かなければ」と考えていても、本人は長距離旅行より近場への外出を望んでいる場合があります。反対に本人の希望が強いなら、何が旅行を難しくしているのかを一つずつ整理することで、諦めずに済む方法を探せます。
短時間外出と旅行を分ける
家族以外へ付き添いを頼む方法には、一般的な介護保険外の外出付き添いと、旅行そのものへの同行や計画を扱う介護旅行サービスがあります。どちらも「付き添い」と呼ばれますが、買い物や通院など数時間の外出と、遠方への日帰り旅行や宿泊旅行では必要な支援範囲が違います。
通常の保険外外出付き添いは、行き先と交通手段がある程度決まっていて、自宅から目的地までの移動、現地での歩行や車いす介助、トイレ、食事、見守りなどを一定時間頼みたい場合に向きます。近場の日帰り外出なら、この範囲で対応できる事業者もあります。
一方、介護旅行サービスには、旅行行程の相談、移動手段の検討、宿泊施設の確認、介護職の同行、車いす介助、入浴、夜間介助などまで相談できるものがあります。ただし「介護旅行」と書かれていれば何でも頼めるわけではありません。看護師同行が可能か、夜間対応ができるか、旅行手配そのものを扱うかなどは事業者ごとに違います。
家族が同行しない場合は、支援者がいない時間が生まれないかも確認します。ホテルへ到着した時点で付き添いが終了するなら、その後の夕食、着替え、入浴、就寝、夜間トイレ、翌朝の準備は誰が行うのかを決めなければなりません。
「温泉へ1泊するだけなら、普通の外出付き添いでも足りるかな?」
宿泊があるなら、日中だけの付き添いで足りるかを先に確認してください。夜間に支援が必要なら、通常の数時間利用とは分けて考えたほうが安全です。
本人が着替え、入浴、夜間トイレを一人で行えるなら、日中だけ外部支援を使う方法もあります。反対に夜間も介助が必要なら、同行者の宿泊や夜間対応が可能なサービスを探す必要があります。サービスの名称ではなく、必要な時間帯を埋められるかで判断します。
宿泊旅行では、日中の付き添いだけでなく、夕方から翌朝まで誰が支えるかを確認します。
必要な介助を工程で分ける
旅行の準備をするときは、「親を旅行へ連れて行けるか」という大きな問題のまま考えないことが重要です。自宅から玄関、玄関から車や駅、乗車、乗り換え、現地移動、食事、トイレ、観光、宿泊、入浴、就寝、翌朝、帰宅というように工程を分けます。
例えば自宅では杖で歩けても、駅構内を長く歩けない場合は、駅まで車で移動し、駅では車いす、観光地では本人が歩ける範囲だけ歩く方法があります。すべてを介助してもらう必要はありません。負担が集中する部分だけ支援を足す考え方でも構いません。
排泄については「トイレへ行ける」だけで終わらせず、便座への立ち座り、衣類の上げ下げ、車いす対応トイレの必要性、失禁用品、夜間の回数まで確認します。ホテルの部屋では一人でトイレへ行けても、観光地の狭いトイレでは介助が増えることもあります。
食事も同じです。自宅では問題なく食べられていても、旅館の座敷では姿勢が取りにくい、ビュッフェでは料理を自分で運べない、食事時間が変わって服薬時間もずれるといった問題があります。移動だけではなく、旅行先で生活する時間全体を見ます。
「介護付き旅行は、もっと介護が重くなった人が使うものだと思っていた」
全面的な介助が必要な人だけが対象とは限りません。長距離移動だけ車いすを使う、乗降時だけ介助を頼む、家族が難しい入浴だけ支援を入れるなど、必要な部分を補う使い方も考えられます。
事業者へ相談するときも「要介護2です」とだけ伝えるより、「室内は杖で歩ける」「屋外は100メートル程度で疲れる」「トイレは立ち上がりのみ支援が必要」など生活場面で伝えるほうが、必要なスタッフ数や利用時間を判断しやすくなります。
旅行を工程に分け、本人ができる部分と外部へ頼む部分を切り分けることが支援選びの基本です。

介護認定を受けていなくても外出付き添いを相談できますか?

保険外サービスでは、介護認定がなくても相談できる事業者があります。認定の有無だけでなく、現在の身体状態と必要な支援を伝えて確認してください。

家族も旅行へ行き、一部だけ介助をお願いできますか?

対応できる事業者があります。入浴、長距離移動、トイレなど、家族が難しい部分を具体的に伝えると分担しやすくなります。

旅行途中で疲れたらどうすればよいですか?

休憩場所だけでなく、観光を一つ中止する、ホテルへ早く戻るなど予定を短くする方法も事前に決めておきましょう。

日帰りと宿泊の違いを見る
日帰りと宿泊では確認する範囲が大きく変わります。日帰りなら、出発から帰宅までの移動、食事、排泄、服薬、休憩が中心です。宿泊になると着替え、入浴、就寝準備、夜間トイレ、夜間の見守り、翌朝の起床や服薬まで加わります。
特に見落とされやすいのが夜間です。自宅では一人でトイレへ行ける人でも、ホテルではベッドの高さ、照明、床の材質、トイレまでの距離が変わります。寝ぼけた状態で知らない部屋を歩けば、普段より転倒しやすくなる可能性があります。
入浴も「バリアフリー客室だから大丈夫」とは限りません。浴室入口の段差、浴槽の高さ、手すり、シャワーチェア、車いすから移乗できるスペースなどを確認します。大浴場を利用するなら、脱衣所から浴場までの移動、滑りやすい床、浴槽のまたぎ動作も考えます。
翌朝の疲労も忘れないでください。初日は元気に動けても、翌朝に足元が不安定になったり、食欲が落ちたりすることがあります。帰宅日は観光を減らす、チェックアウトを急がない、駅まで車を使うなど、帰りの行程を軽くしておくと負担を抑えられます。
宿泊旅行では、日中の移動だけでなく、入浴・夜間トイレ・翌朝まで誰が対応するかを決めておきます。
家族が担う範囲を決める
外部サービスを使うからといって、旅行を全部任せる必要はありません。家族も旅行へ行けるなら、食事や観光は一緒に楽しみ、移乗や入浴など負担の大きい部分だけ専門職へ頼む方法があります。家族がまったく同行できない場合は、出発から帰宅までの支援範囲をより細かく確認します。
家族への途中連絡も決めておきます。自宅を出た時、目的地へ着いた時、ホテルへ入った時、翌朝、帰宅時など、どこで連絡が欲しいかを相談しておけば、付き添えない家族も状況を把握しやすくなります。予定変更や体調変化が起きた時に最初に連絡する人も決めます。
家族側の限界も隠さず整理してください。旅行代金の負担はできるが同行は難しい、出発時だけなら手伝える、電話連絡には対応できるが現地へすぐ駆け付けられないなど、家族にも条件があります。その条件を事業者へ伝えたほうが、現実的な支援体制を作りやすくなります。
「家族が付き添えないのに旅行へ行かせるのは無責任な気がする」
家族が同行できないことと、本人の希望を諦めることは同じではありません。必要な支援を適切に外部へ分担することも、家族が親の生活を支える方法の一つです。
仕事、子育て、自分自身の体力、遠距離介護など、家族が付き添えない理由はさまざまです。本人の楽しみを守るためにも、家族一人が無理を続ける方法だけを前提にせず、誰がどこを担当するかを組み直してください。
介護付き旅行サービスの選び方
- 対応できる支援範囲を比べる
- 時間単価より総額で比べる
- 交通と宿泊環境を確認する
- 服薬と体調変化に備える
- 相談前の情報を整理する
- 本人に合う方法を決める
親の介護で迷ったときに役立つ情報を、これからも分かりやすく発信していきます。
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対応できる支援範囲を比べる
介護付き旅行サービスを選ぶときは、事業者の名称より「今回の旅行で何を頼めるか」を確認します。スタッフが同行するだけなのか、旅行行程の相談からできるのか、宿泊中の介助まで可能なのかで役割が違います。
介護旅行サービスの一例として、日本介護トラベルサービスでは、外出支援と介護付き観光旅行を分けて料金や利用条件を案内しています。介護付き旅行は利用者の希望に合わせたオーダーメイドとされているため、実際に利用するときは日本介護トラベルサービスの料金案内など、候補となる事業者の公式ページで現在の内容を確認してください。
一般的な保険外外出付き添いでも、近場の日帰りなら対応できる場合があります。ただし普段は買い物や通院の付き添いを行っている事業者でも、長距離移動、県外への同行、宿泊、夜間対応まで受けられるとは限りません。旅行の日数と移動距離を伝え、どの時間まで支援を受けられるかを確認します。
スタッフの資格だけでなく、必要な介助そのものに対応できるかも大切です。車いす移乗、排泄、入浴、認知症の見守り、食事介助など、今回必要な支援を一つずつ伝えます。医療的な対応が必要な場合は、介護職だけで対応できる内容なのか、看護師の同行や別の調整が必要なのかも確認してください。
介護保険外サービスそのものの使い分けについては、頑張れ健さんの介護保険外サービスを使う時の判断基準も参考にしてください。介護保険でできることと、自費で補う部分を分けて考えやすくなります。
「旅行専門サービスのほうが安心そうだから、最初からそこを選べばいい?」
必ずしも旅行専門サービスだけが正解ではありません。近場の日帰りで見守りや移動介助だけなら、通常の保険外付き添いで足りる場合があります。
反対に、宿泊、入浴、夜間トイレ、長距離移動、旅行行程の調整まで必要なら、旅行対応に慣れたサービスを比較する意味が大きくなります。必要な支援よりサービスが大きすぎると費用が増え、必要な支援より小さければ介助が抜けます。
サービス名ではなく、今回必要な介助をどこまで引き受けてもらえるかで比較します。
時間単価より総額で比べる
旅行付き添いの料金を比べるとき、介護士の1時間料金だけを見ると実際の負担額を読み違えます。旅行では本人の旅行代金以外に、同行スタッフの交通費、宿泊費、食事代、施設入場料、車両費、事前面談、夜間対応などが必要になる場合があるからです。
2026年9月確認時点で、日本介護トラベルサービスでは介護付き観光旅行の料金目安として、自立~要介護3は日帰り38,500円、1泊2日71,500円、要介護4~5は日帰り49,500円、1泊2日99,000円と案内しています。ただし、同行スタッフの交通費、宿泊費、食事代、施設入場料などは別途負担となるため、この金額だけで旅行総額を判断することはできません。
ここで大切なのは、この料金を介護旅行全体の全国相場として扱わないことです。介助量、日数、同行時間、スタッフ数、夜間対応、交通手段などで料金は変わります。一つの事業者の掲載料金は料金構造を理解するための参考として使い、実際には自分の親の条件で見積もりを取ります。
「1時間いくらかを比べれば、一番安いサービスが分かると思っていた」
旅行では時間単価より、必要な支援をすべて含めた最終的な総額を比較してください。
例えば同行料金が安くても、スタッフの交通費や宿泊費、夜間介助が別なら総額は大きくなります。反対に基本料金が高く見えても、必要な支援が含まれている場合があります。同じ条件を伝えずに価格だけ比較すると、どちらが本当に安いのか判断できません。
同じ日程・同じ介助内容を伝え、基本料金ではなく帰宅までに必要な総額で比べます。
| 確認する費用 | 内容 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 同行料金 | 介護士・看護師等 | 利用時間と人数 |
| 交通費 | 本人・スタッフの移動 | 往復分を確認 |
| 宿泊費 | 本人・スタッフの宿泊 | 別室・同室の条件 |
| 夜間料金 | 見守り・排泄介助等 | 対象時間を確認 |
| 車両費 | タクシー・福祉車両等 | 高速・駐車場も確認 |
| 事前費用 | 面談・計画・手配等 | 別料金か確認 |
| その他実費 | 食事・施設入場料等 | スタッフ分も確認 |

旅行先がまだ決まっていなくても相談できますか?

候補段階から相談できるサービスがあります。行きたい地域、日数、本人の状態、やりたいことを伝えて確認してください。

同行スタッフの宿泊費も利用者負担になりますか?

利用者側の実費負担となるサービスがあります。見積もり時にスタッフ分の交通費、宿泊費、食事代まで確認しましょう。

キャンセル料も先に確認したほうがよいですか?

確認しておきましょう。高齢者は直前に体調が変わることもあるため、何日前から料金が発生するかを知っておくと安心です。
交通と宿泊環境を確認する
介護士や付き添いスタッフを確保しても、交通手段や宿泊施設が本人の状態に合っていなければ旅行は難しくなります。車いすを使うなら、自宅から駅、駅構内、ホーム、車内、到着駅、観光地、ホテルまでを一続きで見ます。
鉄道では、エレベーターの有無だけでなく、乗降時に係員の支援を頼む必要があるか、車いす対応座席やスペースの予約方法はどうなっているかを、実際に利用する鉄道会社の公式情報で確認します。路線や列車によって設備や手続きが違うため、全国共通の一つの条件で決めないほうが確実です。
飛行機を利用する場合も、空港で車いすを借りるのか本人の車いすを預けるのか、電動車いすならバッテリー情報が必要かなど、利用する航空会社へ確認します。医療機器を持ち込む場合は追加の手続きが必要になることがあるため、予約の早い段階で相談してください。
自動車で長距離を移動する場合は、乗車できるかだけでなく休憩時の乗り降りまで考えます。サービスエリアで車いすを出すのか、トイレまで歩けるのか、一般車両への移乗が難しければ福祉車両を使うのかなど、途中の動線も確認します。
車いすを使う親の移動方法や一般タクシー・介護タクシーの違いは、頑張れ健さんの車椅子利用時の交通手段と費用の選び方でも整理しています。通院向けの記事ですが、旅行の移動手段を考える時にも共通する判断材料があります。
宿泊先も「バリアフリー対応」という表示だけで決めないことが大切です。客室入口の段差、ベッドの高さ、ベッド周囲の車いすスペース、トイレの手すり、浴室、シャワーチェア、エレベーター、食事会場までの距離などを本人の状態に合わせて確認します。
「バリアフリールームなら、細かい確認まではしなくても大丈夫じゃない?」
設備の名称だけでは、本人が実際に使えるかまでは分かりません。必要な動作に合わせて確認してください。
例えば手すりが付いていても、本人が立ち上がる位置と合わなければ使いにくい場合があります。車いすで客室へ入れても、ベッド横へ回り込めなければ移乗が難しくなります。「設備があるか」だけでなく「その設備を本人がどう使うか」で見ます。

服薬と体調変化に備える
旅行で忘れてはいけないのが服薬と体調変化への備えです。薬は日数分を持つだけではなく、薬の名称、服用時間、食前・食後、頓服、保管方法、本人が自己管理できるかを整理します。同行者が服薬をどこまで支援できるかも確認してください。
持病があり、最近体調が安定していない場合は、旅行前に主治医へ相談したほうがよいこともあります。入退院を繰り返している、呼吸器や循環器の症状がある、医療機器を使用しているなどの場合は、本人や家族だけで旅行可否を判断せず、必要な確認を行います。
旅行中に急に体調が変わった場合へ備え、健康保険資格を確認できるもの、薬の情報、持病や既往歴、家族の緊急連絡先、普段の医療機関をまとめておくと対応しやすくなります。すべての医療機関を事前に調べる必要はありませんが、急変時に誰が救急要請し、誰が家族へ連絡するかは決めておきます。
旅行を中止する考え方も共有しておきます。発熱や強い息苦しさのような明らかな異常だけでなく、普段より極端に食事が進まない、反応が遅い、歩行が急に不安定になる、休んでも疲れが取れないといった変化が出た時にどうするかを決めます。
施設介護の現場でも、高齢者の状態を見るときは血圧や体温などの数値だけでなく、普段との表情、反応、会話、食欲、歩行、動作の違いを確認します。旅行中も「予定をこなせるか」より「いつもと比べてどうか」を見たほうが、無理を続けるのを防ぎやすくなります。
体調が普段と違う時は、旅行を最後まで続けることを優先せず、休憩・予定変更・中止を選べるようにします。
相談前の情報を整理する
事業者へ相談するときは「親を旅行へ連れて行ってほしい」だけでは、必要な支援や料金を判断しにくくなります。旅行先がまだ決まっていなくても、本人の身体状態、希望する旅行の形、家族が同行できるか、どの介助が必要かを整理しておくと話が進みやすくなります。
特に要介護度だけで説明を終えないことが大切です。同じ要介護2でも、歩行、排泄、認知機能、食事、服薬、移乗方法は違います。「屋内は杖歩行」「屋外は車いす」「トイレは手すりがあれば一人で可能」「夜間は2回ほどトイレへ起きる」というように伝えます。
旅行の目的も伝えます。「温泉へ行きたい」だけでなく、「本人は温泉街を少し歩きたい」「大浴場が難しければ客室風呂でもよい」「家族は同行できない」「1泊2日を希望」と伝えれば、事業者も必要な介助と行程を考えやすくなります。
普段の生活リズムも役立ちます。起床時間、食事、服薬、昼寝、夜間トイレなどを共有すれば、旅行側の都合だけで無理な行程を組むのを防げます。普段は朝が遅い人へ早朝出発を設定したり、昼寝をする人へ午後まで観光を詰めたりすれば負担が増えます。
| 確認項目 | 伝える内容 | 判断できること |
|---|---|---|
| 歩行・移乗 | 杖・歩行器・車いす | 移動方法 |
| 排泄 | 介助内容・夜間回数 | トイレ・宿泊条件 |
| 食事・服薬 | 介助・食形態・時間 | 行程の組み方 |
| 認知機能 | 混乱・道迷い・見守り | 必要な付き添い |
| 医療面 | 持病・医療機器等 | 専門職の必要性 |
| 旅行希望 | 場所・日数・目的 | 無理のない計画 |
| 家族の役割 | 同行可否・担当範囲 | 外部へ頼む部分 |
「こんなに整理してから相談するのは大変だな」
最初から全部分かっている必要はありません。分かることだけ伝え、足りない項目を事業者と一緒に確認していけば大丈夫です。
相談して初めて「夜中は何回トイレへ行きますか」「車への移乗はできますか」と聞かれ、家族が見落としていた問題へ気づくこともあります。旅行サービスを探す過程そのものが、現在の親の生活動作を整理する機会になります。
整理した結果、旅行全体を専門サービスへ任せるほどではなく、移動や数時間の付き添いだけ必要だと分かる場合もあります。その場合は一般的な保険外付き添いも候補です。旅行専門かどうかから決めるのではなく、必要な支援量からサービスを選びます。
本人に合う方法を決める
最終的に選ぶべきなのは、最も高機能なサービスでも、最も安いサービスでもありません。本人がやりたい旅行に必要な支援があり、家族が無理なく任せられ、費用も納得できる方法です。
近場の日帰りで歩行見守りだけなら、保険外外出付き添いで足りる場合があります。長距離移動と宿泊があり、夜間トイレや入浴まで必要なら、介護旅行サービスを比較する価値が高くなります。医療的な支援が必要なら、それを誰が担えるかも確認します。
いきなり遠方へ1泊するのが心配なら、まず近場へ数時間出掛ける方法もあります。外出中にどの程度疲れるか、車いすを使う場面はどこか、トイレ介助はどの程度必要か、外部スタッフと本人の相性はどうかを確認してから宿泊旅行へ進めます。
短時間外出を試すと、事前の想定と違う部分も見えてきます。車へ乗るまでは問題なくても降りた後に足がふらつく、外出先のトイレでは自宅より介助が増える、長時間になると不安が強くなるといったことが分かれば、本番の旅行で予定を調整できます。
「親が行きたいと言っているなら、多少無理をしてでも連れて行ったほうが後悔しないのかな」
本人の希望は大切ですが、「行くこと」だけを優先して安全性を下げる必要はありません。行程を短くする、移動を減らす、車いすを使う、外部支援を足すことで希望を残します。
目的は昔と同じ旅行を再現することではありません。今の身体状態に合った方法へ変えながら、本人が「行けてよかった」と感じられる時間を作ることです。家族が付き添えない事情があるなら、専門職やサービスへ分担する方法も含めて考えてください。

最初は日帰り旅行から試してもよいですか?

問題ありません。短時間の外出で疲労や必要な介助を確認してから、宿泊旅行へ進む方法もあります。

認知症があっても旅行サービスへ相談できますか?

状態によっては相談できます。道迷い、混乱の起こりやすさ、夜間の様子などを伝え、事業者が対応できる範囲を確認してください。

サービスを比較するときは何をそろえて伝えればよいですか?

同じ日程、交通手段、必要な介助、家族の同行範囲を伝えてください。条件をそろえると料金と対応範囲を比べやすくなります。

親の旅行は必要な支援を分けて考える
親の旅行に家族が付き添えないときは、「家族が行けないから旅行も無理」と決める必要はありません。まず本人の希望を確認し、自宅を出てから帰宅するまでの歩行、移乗、排泄、食事、服薬、入浴、宿泊、夜間対応を一つずつ分けて考えます。
数時間の日帰りなら一般的な保険外外出付き添いで対応できる場合があります。一方、長距離移動や宿泊があり、入浴や夜間トイレまで支援が必要なら、介護旅行サービスを比較する価値が高くなります。同じ「付き添い」でも、どこまで対応できるかは違います。
料金は時間単価だけで比べず、スタッフの交通費、宿泊費、車両費、夜間対応などを含めた総額を確認します。交通機関や宿泊施設についても、全国共通の一つの条件で判断せず、実際に利用する会社や施設へ本人の状態を伝えて確認することが大切です。
旅行を予定どおり全部こなすことも目標にしなくて構いません。本人の体調に合わせて休憩する、観光を減らす、途中から車いすを使う、予定を中止するという余裕を持たせます。本人の希望、安全性、家族の負担、費用を分けて考えることが、無理のない旅行につながります。
健さんの視点コラム
親から「もう一度温泉へ行きたい」「昔行った場所へ行ってみたい」と言われると、家族にはいろいろな気持ちが出てきます。連れて行ってあげたい一方で、仕事を何日も休めない、車いす介助に自信がない、夜中のトイレまで対応できるのか分からない。楽しみの話だからこそ、断ることへ罪悪感を持つ人もいるでしょう。
本人側にも事情があります。以前は普通にできた旅行でも、歩ける距離が短くなったり、トイレの介助が必要になったりすると「家族へ迷惑をかけたくない」と希望を口にしなくなる人もいます。一方で本人は以前と同じように動けるつもりでも、家族から見ると長時間移動が心配ということもあります。
そこで、本人には行きたい場所や旅行でやりたいことを話してもらい、家族は普段の歩行、排泄、服薬、疲れ方を整理します。外部サービスには移乗、長距離移動、入浴、夜間介助など、本人と家族だけでは難しい部分を相談します。誰か一人がすべてを抱えるのではなく、それぞれができる部分を組み合わせる考え方です。
人生健康第一とは、安全を理由に楽しみを全部諦めることでも、無理をして昔と同じ旅行を続けることでもありません。今の身体状態を確認し、必要な支援を追加しながら、本人が大切にしている時間を残していく考え方です。旅行の日数や距離が以前より短くても、その人にとって意味のある外出であれば価値は変わりません。
親の旅行に付き添えない事情があるときは、「行けるか、行けないか」の二択にする前に、何ができれば行けるのかを分けてみてください。日帰りへ短くする、車いすを使う、移動だけ外部へ頼む、宿泊時だけ支援を増やすなど、方法を変えることで残せる楽しみがあります。
介護は、家族だけで抱え続けるものではありません。私たち介護職は、ご本人だけでなく、支えるご家族のためにもいます。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の介護方針や制度利用を断定するものではありません。介護の方法や利用できる制度、支援内容はご本人の状態や地域の状況によって異なります。具体的な判断については、医療機関、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどの専門職へご相談ください。

